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政策として定着したのか 世界的な超低金利は

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金融緩和により超低金利を続ける「金融抑圧」は、貯蓄する側を犠牲にして、借り手の利益を優先する。多くの場合、「借り手」は政府であり、新興諸国では無軌道な政府支出の財源を手当てするために、銀行預金者に支払われる金利を政府が低く抑え込んできた。

一方、7年前に先進国の中央銀行が基準金利をゼロ近くに抑え込んで以来、先進国の「金融抑圧」が目につくようになった。保険会社のスイス・リーが最近まとめた研究リポートが指摘するのは、低金利によって政府は非常に安いコストで国債を発行できるようになる側面があるという点だ。さらに意図せざる結果として、資産バブル、経済格差の拡大、将来のインフレリスクの高まりが生じているという。

インフレリスクについてはまだ判断が分かれるが、資産バブルと格差拡大は明らかだ。多くの国々で資産と株式市場が過熱している。

リポートではさらに、「株価インフレが経済格差を拡大させた」と分析する。米国では上位1%の世帯が金融財産を50%増やしたのに対して、下位90%は12%の利益しか手にしていない。下位20%の層はおそらく恩恵をまったく受けていない。

各国の中央銀行は、超緩和政策が金融市場に歪みをもたらしたと認めている。一つ例を挙げると、機関投資家、とりわけ保険会社や年金基金が深刻な打撃を受けている。

彼らは定率配当証券の大口保有者であり、その投資収益が大幅に下落。投資家や年金受給者に支払う収益が急減した。そこで必然的に、人々は個人個人で、退職後の所得を確保するために貯蓄を増やす必要に迫られた。

そのこと自体に景気を押し下げる効果があり、金融刺激策にマイナスの影響を与えている。各国の中央銀行が積極的な景気浮揚策を講じているにもかかわらず、経済成長を生み出すのにあまりにも長い時間がかかっている。

また別の要因と考えられるのは、世界的な金融危機がきっかけとなって講じられた金融健全化規制だ。金融機関は、高リスクの投資に対し高い資本要件を強制されるようになり、国債保有に駆り立てられている。結果として、生産的投資への貸し付けに回せるカネが減ることになる。ほとんどの国では投資が金融危機前の水準に戻っていない。

「正常な」金利への回復は近々実現しそうにない。むしろ、さらなる金融抑圧と、投資の不振、経済的・社会的緊張の高まり、貧しい年金受給世代の増加が予想される。

今後は、投資家が安全資産にプラスの金利を期待するのは、理にそぐわないのかもしれない。私たちは、自分のカネを安全に保管するには、むしろ中央銀行や政府に金利を払い、プラスの収益は、何らかのリスクを取って初めて期待できるようになるのではないか。

原因の一つには、投資が以前の水準に届くことはないと考えられることがある。アプリの開発に高額の設備投資はいらないからだ。

退職後に健康に暮らせる期間が長くなり、その一方で政府や雇用主からの所得支援は以前よりもずっと縮小すると予想されるので、人々は働き盛りには懸命に働かねばならないと理解し始めている。言い換えれば、今貯蓄を増やすことは理にかなっているのだ。

長い目で見れば、このようなすばらしい新世界は、それほど住みにくい場所ではないのかもしれない。しかし、そこに至るまでの移行期は、金融業者つまり銀行、資産管理会社、とりわけ保険会社にとって、極めて困難な時期となるだろう。

金融危機への対応策を講じるうえで、長期的な民間投資の回復を妨げるような誤ったインセンティブを生み出してしまったのではないか。そんな疑問が規制当局に対して突き付けられている。

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