30年前、あふれ返るおカネを手にした日本人はその使い道を探すことに熱を上げた。旺盛な消費の潤滑油となったのがキャッチコピーだった。コピーライターが時代の寵児となったのだ。
この時代を切り取るときに必ず出てくるコピーがある。「おいしい生活。」。伝説のコピーはつねに糸井重里の代名詞として使われてきた。
だが、バブルを生きていない世代にとって、糸井はもはや「おいしい生活。」の作者ではなく、「ほぼ日刊イトイ新聞」のイトイ、あるいはサイト内での呼び名、「ダーリン」の人というイメージなのかもしれない。「ほぼ日」はとっくに「おいしい生活。」を超えているのだ。
ITっぽくないIT企業の誕生
ほぼ日への月間平均訪問者数は130万人(2014年)に達する。運営会社である東京糸井重里事務所の事業規模も拡大中だ。14年3月期の売上高は30億円を超える。帝国データバンクの調査によると同じ時期の純利益は約3億円で、一貫して黒字を維持している。コピーライターの肩書を捨てた糸井は経営者として、ここに全精力を注いできた。
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