佐賀は年2回実施へ、「教員採用試験」倍率低下の深刻度 大量退職で人材の争奪戦が本格化する懸念も
「夏の採用試験をベースに人材を確保することに変わりはないが、何らかの理由で夏に受験ができなかった方や、調子を落として1回目の試験に合格できなかった方が1年待つことなくチャレンジする機会を設けたい。とにかく、佐賀県で教員として働くことを希望する人材、意欲に燃えている人材を1人でも多く確保していけたら」(田中氏)という。
さらに、これまで既卒者に対してのみ行ってきた1次試験の免除を新卒にも拡大する。佐賀大学、西九州大学のほか九州・沖縄・中国地方にある大学、大学院の中から15校程度指定し、それらの大学・大学院から推薦を受けた人に対して1次試験、いわゆるペーパーテストを免除。受験実績の高い大学に対して推薦枠を示し、優秀な人材に少しでも佐賀に残ってもらいたい考えだ。
また特別選考として「さがUJIターン現職特別選考」と「さが離島特別選考」も新設する。「佐賀県出身」「佐賀の高校に通っていた」など佐賀にゆかりがある、また移住を予定する現職教員に対する1次試験を免除し、面接のみの特別枠で選考を行う。「『佐賀UJIターン現職特別選考』は、佐賀に戻りたいが、現職が忙しくて試験勉強ができないなど、二の足を踏んでいる方の背中を押したい」(田中氏)という狙いがあり、佐賀に加えて東京にも会場を設けて面接を実施する。
一方「さが離島特別選考」は、採用後8年間の間に離島への配置、勤務を約束するもので、佐賀ならではの豊かな自然環境、地域そのものの魅力に触れたいと考える教育関係者に興味を持ってもらおうと考えたものだ。
では、こうした施策による効果をどの程度見込んでいるのか。初めてのことでまったく予想がつかないが、受験者が集まらず改善すべきことが出てくれば引き続き次年度で対応していくという。
「佐賀は、電子黒板やタブレットなどのデジタル活用にも先駆的に取り組み、現在も県教委で県立高校のノウハウを中学校に伝えるプロジェクトを進めている。デジタルが得意な方に活躍の場があり、そうした先進性に魅力を感じて来る人もいます。地域的にも県的にもコンパクトで施策も一気に進むし、歴史もあって魅力のある県。多くの人に佐賀に関心を持ってほしい」と田中氏は話す。
退職者の増加や臨時的任用教員の不足に加えて、35人学級や教科担任制の導入で必要な教員数は今後も膨らむことが予想される。全国的に定員割れや人材の奪い合いが本格化する懸念もある中、教育委員会は複数年を見越して計画的に採用を進めていかなければならない。
もちろん、なり手不足解消のため、働き方改革による環境改善は引き続き求められるが、全国一律ではなくその地域ならではの魅力や、こうした選考で特色を打ち出していくことも一考に値するだろう。
(文:編集部 細川めぐみ、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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