10万8000台の「1人1台端末」、神戸市奮闘の舞台裏 学校数、教員数が多い大都市ならではの課題も
※北米で17年周期、13年周期に大発生するセミのこと。ほかの種類との交雑によって羽化の周期が乱れると、種の絶滅につながってしまうため、最小公倍数が大きく、ほかの種類との交雑が起きにくい素数の年数を地中で過ごす種類のセミが生き残ったとされる
ICTの進捗は、教員間の人間関係にも大きく左右
学校現場でのICT活用が進まない最大の原因は、教育におけるICT活用の推進という掛け声はあっても、その実践は学校現場、教員に任せられていて、教員の側もICT活用のノウハウが不足していることにある。実際、困ったことがあっても、大きな都市になるとハードとソフトで担当部門が分かれていて、どこに相談したらいいのかわからないということも少なくないという。
そこで神戸市教育委員会では、教育のICT化についての教員の悩みや、実践を共有するため、教員向けのニュースレター「GIGA通信」を配信するほか、Microsoftのコラボレーションプラットフォーム「Teams」上に「お悩み相談ルーム」を設けて、教員同士が、ICT活用の方針やルール作り、実践例などを共有する場を設けている。
吉岡氏は「ICTの進捗は、教員間の人間関係にも大きく左右されると感じている。児童・生徒の指導についてはベテラン教員が若手にアドバイスするのが一般的だが、ICTの推進では、PCに詳しい若手教員がベテラン教員に教える場面も必要になる。教員同士が支え合える職場環境が何より大切だと実感している」と語る。

ICT活用がうまく進んでいる学校と、そうでない学校の差は校長先生次第とよくいわれるが、吉岡氏は「職員の人間関係は、職員室を見ればわかる」とも話す。困ったことがあったら気軽に相談できる同僚性が育っているか……。「ICT活用の必要性が高まったことで、職員がサポートし合う場面や、職員室での会話も増えた」(吉岡氏)という学校もあるという。
神戸市のような大きな都市になると、ICTに詳しいキーパーソン、教育委員会、それらに基づく万全のサポート体制だけでは解決できないことがどうしても増える。教員一人ひとりの意識、結束が、学校教育の一段の進化にはいっそう求められる。
(文:新木洋光、写真:すべて神戸市教育委員会提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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