東大「異才発掘プロジェクト」の看板を替えた真意 ROCKETからLEARNへ、挑み続ける居場所づくり

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志がない子も誰でも参加できるプログラムを

こうして21年6月、ROCKETの看板を下ろして新たに始めたのが、「LEARN」だ。Learn(学ぶ)、Enthusiastically(熱心に)、Actively(積極的に)、Realistically(現実的に)、Naturally(自然に)の頭文字に由来する。

「今の世の中は、標準的な人間像を設定して、そこに当てはまらない人を排除してしまっている。その社会の枠を崩すためのプラットフォームがLEARNです。学びはもっと多様性があっていいと思っていて、研究室で取り組んできたほかの学びの場も統合しました」

まず賛同してくれたのは、ニトリホールディングス代表取締役会長の似鳥昭雄氏だった。「似鳥会長は『僕も子どもの頃、困っていたよ。オール1でさんざん怒られたし、いじめられた。そういう子どもを救ってあげたいね』とおっしゃってくださった」と、中邑氏は話す。今、似鳥氏が支援する「LEARN with NITORI」は、「いちばん甘いサクランボを探せ!」など、教科書を離れて学びの楽しさに気づくプログラムとして進行中だ。25年度までに全都道府県での実施を目指す。

ニトリの果樹園で行った「LEARN with NITORI」。ミッションは「いちばん甘いサクランボを探せ!」

10月には宮崎県で、「自分で働いて晩ご飯を食べよう」というテーマで小中学生を対象にした労働体験の提供を予定している。農家で働いた分だけ農作物をもらうことができ、その収穫物を持ち寄って夕飯を食べる企画だ。肉は自分の収穫物と物々交換で手に入れるなどのルールも設け、サービスにはコストや対価が生じることを子どもに教えたいという。

「働いて経済的な観念を身に付けることは重要だと思っています。ビジネス系のプログラムというとピッチコンテストが多いですが、こうした労働体験を通じて、上手にしゃべれない子は地道にやればいいということも伝えたいですね」

1人でやりたいことを続けている子を応援しようと、成績不問の奨学金「LEARN ONE」もつくった。

「オール1でもいい、成績不問です。高い金額は出せませんが、例えばセミの抜け殻ばかり集めている子が、それを整理するケースが欲しいと言ったら買ってあげたり、会いたい人がいたら会う手伝いをしたり。応援してくれる人間がいることを伝えたいです」

一方で、突き抜けた子を否定するものではないという。引き続き支援は必要だと考えており、学校教育に飽き足らない子どものためのプログラム「LEARN with Porsche」も用意している。

今年8月のポルシェジャパンとの共催「LEARN with Porsche」は、北海道で実施。写真は清水町の「森の馬小屋」にて、ロープ1本で馬を捕まえて連れてくるプログラムの様子

中邑研究室では、以前からICTを活用した障害児の教育課題研究なども行ってきたが、このプロジェクトでは重度重複障害児・者とその保護者のコミュニケーションを支援する「LEARN in FOREST」や、18歳以降の進路先が限られてしまっている知的障害者の学びや働き方を支援する「LEARN with YUTAKA COLLEGE」なども行っていく。

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