メルカリ山田CEO「女子のSTEM奨学金」創設の背景 門戸広げる「抽選型」の選考にした納得の理由

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実際、メルカリではこれまでも外国籍エンジニアの積極採用のほか、D&I Councilの設立、ジェンダーマイノリティー向けエンジニア育成プログラム(Build@Mercari)の実施、無意識バイアスワークショップの研修資料公開などD&Iへの取り組みを行ってきた。

こうした取り組みの中で、大きな課題となっていたのが国内の女性エンジニア比率が20%にとどまるなど、ジェンダーギャップの改善が非常に難しい状態にあることだった。その比率はOECD諸国と比べても非常に低く、日本は最低のポジション。この課題を解決するためには、中学・高校時点でSTEMの女性比率を高めることが不可欠だと判断した。その実現には、営利の範囲を超え非営利活動として行う必要があるため、自分の資産を社会に還元していく手段として、今回財団を設立したと山田氏は語る。

「D&Iは個人的に課題を感じている分野であり、個人的なライフワークとして取り組む方針で、ジェンダーギャップもその1つといえます。財団としては中長期的に30億円以上を投じる予定であり、その第1弾がSTEM女子高校生奨学金となるのです」

日本のSTEM分野には、なぜ女性が少ないのか

では、そもそもなぜ日本国内ではSTEMを選ぶ女性が少ないのだろうか。その理由としては、お金の問題のほかに、親や教員など周囲からの反対、社会での理系女子のロールモデルの少なさ、理系科目の先生に男性が多い、同級生の多くが文系を選択することなどが挙げられる。こうした事情が女性のSTEM進出のハードルとなっているのだ。

「しかし、もし多くの女性がSTEM分野へ進めば、科学技術の発展が促されることに加え、女性の給料も高くなり、リモートワークや産休・育休が取りやすくなるなど柔軟な働き方が可能となります。また、成果を測りやすいので能力がきちんと評価されるため、女性が社会で活躍し認められる機会が増えていくというメリットが生まれるのです」

山田氏の財団では、大学入学者におけるSTEMの女性比率を21年度の18%から35年度には28%に引き上げることを目標として掲げている。そのため、奨学金制度の運用に当たっては3つの戦術を立てている。

まず1つ目が、オンラインの活用だ。応募・選考・支給などプロセスを極力オンライン化することで、効率化を図り、今後は常時1000名以上への支給を目指す。2年目以降はソーシャルメディアやオンラインコミュニティー、クラウドファンディングなども活用していく。

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