BYOD始めた都立青山高校「ミスターICT」の執念 「オンライン授業」こだわった試行錯誤の舞台裏

また、これまで年間400万円の紙代がかかっていたが、シラバスやプリントもデータで送るなどペーパーレス化を図り、BYODをコスト削減につなげていく。
6月からは、既存のシステムでは難しい「保護者とのコミュニケーション」に関する独自システムも運用を始める予定だ。ちなみに小澤氏は、着任後すぐに独自の「Webアンケートシステム」の構築も手がけており、現在このシステムは10校の都立高で採用されている。今回は、同意書などを保護者と双方向でタイムラグがない状態でやり取りできるシステムを開発中だという。
小澤氏の改革は、ICT化だけではない。入試問題が自校作成となったことを受け、大学入試改革を見据え、18年度から新傾向を先駆けて導入している。「作問力は指導力」をスローガンに掲げ、定期考査など校内で行うテストも、思考力などを問う記述や新傾向、初見問題を入れることをスタンダードにした。
「東大現役合格は私が来てから増えていません」と嘆くが、大学合格実績は安定的に伸びている。20年度卒業生の医学部医学科を含む難関国公立大の現役合格者数は24名と進学指導重点校指定以来最高、その他の旧帝大などを含めると40名の大台に初めて到達した。また、早慶上智と東京理科大で延べ232名など難関私大にも多くの現役合格者を出している。
難関国公立大の進学率向上は進学指導重点校の使命なので今後もこだわっていくというが、日頃から教員にも生徒にも「うちは進学指導重点校だけど、受験指導重点校ではない」と伝えているそうだ。
「自分がやりたいことをやって幸せになることが大切。自分が幸せならば周囲も幸せになり、やがては社会がよりよくなりますよね。やりたいことがなければ興味関心を追求し、その興味にふさわしい大学はどこか考えること。そこを支援するのが進学指導だと思います」
伝統ある公立進学校にICT化やテスト改革など時代を見据えた取り組みで新たな風を吹き込む小澤氏。「ピンチをチャンスに」をモットーに、独自の青高改革は続く。

東京都立 青山高等学校 統括校長。英語の教師として都立高校に赴任。2001年から指導主事として教育行政に携わる。都立学校ICT計画に当初から携わり、庁内では「ミスターICT」と呼ばれていた。生徒指導要録の電子化や成績等管理サーバーの導入、東京都教職員研修センターのICT化の推進などに取り組んできた。指導部主任指導主事、教職員研修センター専門教育向上課長を経て、16年より現職
(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真は今祥雄撮影)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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