月給10万円でもやり手記者揃い、究極の“ファブレス”ニュースサイトはメディア界の風雲児となるか

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 それでも毎日、山のように履歴書が届く。経営難を背景に、米メディアでリストラの嵐が吹き荒れる中、記者もその対象外ではないからだ。海外支局の閉鎖を受けて、そのまま仕事がなくなるケースもあり、優秀な人材をスカウトしやすい環境になっている。もともと米国ではフリーランス記者が活躍できる土壌が整っており、ひとりで複数の有力媒体を掛け持つのも珍しくない。現にグローバルポスト記者の多くも、他媒体と掛け持ちをしていたり、本を執筆中だったり、と活動の幅は広く、記者が雇用形態にこだわる向きもないようだ。

40年来の“夢”実現、成功のカギはコンテンツ有料化

ケーブルテレビ会社の社長を務めていたバルボーニ氏が起業のアイデアを思いついたのは今から40年近く前の話だ。当時から米メディアの国際報道に不満を持っていたが、テレビ局に就職したことで起業の夢は断念、テレビマンとしてのキャリアを着実に積み上げてきた。

転機は3年前に訪れた。「ふと、あの夢を叶えるなら今しかないと思い立った」(バルボーニ氏)。企画書を何度も書き換え、最終版ができあがったのは07年の6月。その後、出資を募る一方で、セノット氏をスカウト。08年4月にボストンに事務所を構え、記者集めとサイト構築に奔走し、今年1月のサービス開始にこぎつけた。

報道機関を立ち上げるうえでこだわったのが、営利会社という形態だ。折からのメディア不況に加え、ブログなど新たな情報源が台頭している。「もうニュースで稼げる時代じゃない」--。周りからは懐疑的な声が聞こえてきたが、メディアがビジネスとして生き残っていくには営利形態は絶対だった。模索する中でたどりついたのが、固定費を低く抑えられるネットという形態だった。海外支局という重い「インフラ」を持たずにすむのもコスト面では大きい。

今後は、新聞社等向けの配信のほかに、ネット上の広告事業も展開。さらに、力を入れるのが3月から開始する有料コンテンツ配信サービス(年間199ドル、学生は年間50ドル)で、最終的には「40~45%は広告外収入で稼ぎたい」(バルボーニ氏)と意気込む。

有料サービスでは、記者との電話会議や、書いてほしい記事をリクエストできるサービスなどを展開する。米国でコンテンツの有料配信で稼いでいるのは米ウォールストリート・ジャーナル紙の電子版など、ほんの一握りだが、「ネット上のコンテンツをすべて広告で支えようというのは無茶な考え。無料ですべてが手に入る時代は終わらなければならない」とバルボーニ氏。

「多くの媒体はネットでコンテンツを無料で流しているが、購読者数が落ち込んでいるのに、コンテンツを無料で流しているのでは意味がない。購読収入に変わるのがコンテンツ配信収入だと考えないと生き残る道はない」。

“究極のファブレス”メディアは新たなメディアビジネスを築き上げられるか。グローバルポストの挑戦の行方は、米国メディアと経営事情がそう変わらない日本のメディアも、無関心ではいられないはずだ。
(倉沢美左 =東洋経済オンライン)

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