身売り交渉決裂 日本ビクター漂流の深層

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ケンウッド案が再浮上

 松下にとってビクター問題は長年の懸案。歴史的な経緯で株を保有してきたが、シナジーはなく、中村邦夫前社長時代から投資ファンドなど複数の相手と水面下で売却交渉を行ってきた。今回は入札まで実施する念の入れようだったが、またもや破談。困った松下はケンウッドに接触し、TPGとの交渉を打ち切った直後から交渉に入った。

 もともと、ケンウッドは昨年末に松下へビクター買収を打診したが、ビクターの反発やケンウッドの資金調達力を疑問視した松下がリストから外した経緯がある。ただ、ケンウッドの河原春郎社長は「ビクターさんが一緒にやろうという気になってくれれば、そのための手段はいくらでも考える」と熱烈なラブコールを送り続けていた。

 関係者らによると、ケンウッドとビクターが共同持ち株会社を設立し、松下が保有株式をその持ち株会社へ売却する案が有力。ただし、金融機関からの支援を取り付けるため、一括売却にこだわらず、段階的に松下の持ち株比率を下げる方向で検討を進めている模様だ。

 交渉は始まったばかりで、その行方は流動的な部分が多いのも事実。ただし、松下にとっても、ビクター処理をこれ以上長引かせるわけにはいかない。04年春に一時1300円を超えた株価は、直近で400円台まで下落。中途半端な状態で放置されたビクターは、明確な生き残り策を描けないまま、企業価値の毀損が続いている。

 交渉の長期化はビクター社内にも暗い影を落とす。「正直言うと、どこでもいいから早く(買収先が)決まってほしい。先が見えない状態がいちばんつらい」(ビクター社員)。これ以上決着が長引けば、さらなる社員の士気低下を招き、肝心なビクター再建そのものがますます難しくなる。

(書き手:中島順一郎、渡辺清治 撮影:梅谷秀司)

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