GMOイエラエが38時間の激闘を制して3連覇、世界中のホワイトハッカーが集結して腕を競う「DEF CON(デフコン)」の凄みと本当の価値
38時間にわたる競技中、チームは柔軟な協力体制で問題に取り組んだ。手が空いているメンバーが解かれていない問題に取り組み、Discord(チャットツール)で情報共有しながら協力して進めたのだ。
途中で手放す時も、そこまででわかっていることを書き残したり、それらを見て解決策を思いついた人が続きを引き継いだりして、リアルタイムで情報を共有し、全員で協力してゴールを目指した。
順調に問題を解き進めていたチームだが、思わぬ形で体力を削られる展開も待っていた。初日の夜10時頃から、メンバー総出で取り組んでいた難問が解けずに残っていたのだ。渡部氏、小田切氏、養田氏の3名は、ホテルで完全に徹夜状態でこの問題に取り組み続けた。
「問題に不備があったみたいで、結局次の日の朝に直ったんですよ」と養田氏。運営側のミスが原因であり、修正されるとすぐに解くことができたが、疲労は蓄積していた。しかし、全問制覇という目標が実現できそうな状況になっていたので、チームは手を止めなかった。

競技中には、さまざまな印象深い問題があった。養田氏が取り組んだのは、500MBもの圧縮されたログファイルを解析するフォレンジック問題だ。膨大なデータの中から攻撃の痕跡を見つけ出す、根気と洞察力が求められる作業だ。
「ログを全部解析して、どういう攻撃をされたのかを解析しました。そして、その攻撃者と同じ内容を辿ってみて、最終的に攻撃されたものを復元できるとフラグが手に入るような問題でした」(養田氏)
想定外だったバイナリーエクスプロイテーションの問題では、GMOイエラエの層の厚さが発揮された。実は、GMOイエラエからは、Cloud Villageとは別に、世界最高峰とされる「DEF CON CTF本戦」にも別チームのメンバーが参加していた。渡部氏がこの問題に悩んでいると、本戦参加メンバーが来たので見てもらったところ、サクッと解いて戻っていったという。
専門分野が異なるトップエンジニアが多数在籍し、シームレスに協力できる体制が構築されていることが、この難局を乗り切るカギとなった。ちなみに、DEF CON CTF本戦に出たチーム「Blue Water」は世界2位を獲得している。
そして、競技終了までまだ時間のある2日目の午前10時頃、ついに全27問の完答を達成。最終的な合計ポイントは1万9880ポイント。運営に追加の問題がないことを確認し、この時点でGMOイエラエの優勝が確定した。
さらなる高みを目指して新たな分野への挑戦も
Cloud Village CTF 3連覇という快挙を成し遂げたGMOイエラエ。大会終了後、Cloud Villageのクロージングノートでは副賞としてPS5が贈呈され、さらにDEF CON全体のアワードセレモニーでは、巨大な会場のステージに立ち、その栄誉が称えられた。CTFで圧倒的な強さを見せつけた彼らだが、その視線はすでに未来を見据えている。
現地初参加でビレッジ全体の視察も担った養田氏は、「来年は本当にクラウドCTFに注力し、自分も力になれたらなと考えております」と意気込みを語った。
同じく初参加の水野氏も、「会場を回ってみて結構ほかにも面白そうなビレッジがあったので、今年行った経験をもとに、来年はまた別のCTFでもいい報告ができるようにしたいと思っています」と新たな分野への挑戦も視野に入れている。
経験者の強さを示した小田切氏は「来年はクラウド課だけでチャレンジするか、もしくはGMOイエラエの技術力の高い人たちがいなくても優勝できるようにしたいです」と新たな挑戦への意欲を見せた。
チームを牽引した渡部氏は、さらなる高みを目指す決意を新たにする。
「チームとして、より格の高い大会でも成果を出していきたいと思っています。自分自身も技術を磨いて、レベルの高い大会でもちゃんと貢献できるように、頑張っていきます」(渡部氏)
サイバー攻撃が高度化・複雑化する現代において、彼らホワイトハッカーの役割はますます重要になっている。CTFという競技を通じて磨かれた世界トップレベルの技術は、実社会におけるサイバーセキュリティの最前線で活かされていくだろう。チームGMOイエラエの挑戦は、これからも続いていく。
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