2025年のドル円は?「実需の円売り」は影を潜める 【前編】原油価格が下落し貿易赤字は縮小へ

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「家計の円売り」の代理変数と注目されてきた投資信託経由の対外証券投資は1~11月合計で10兆6792億円に達している。2023年は1年間で4兆5447億円だったことを踏まえれば、2024年は円相場に「新しい売り手」が生まれた年だったと言って差し支えない。

しかし、これが永続的な事象なのか。まだ判断はつかない。

「家計の円売り」、秋以降には減衰

9月以降、「家計の円売り」の勢いは著しく衰えており、果たして2024年初来からの勢いが資産運用立国元年ゆえのご祝儀だったのか、9月以降の衰えは8月5日の令和版ブラックマンデーの影響なのか、それとも例年9月以降には成長投資枠(年240万円)を使い切ってしまう行動パターンになっていくのかなど、現時点で言えることは多くない。

しかし、仮に直近3カ月(9~11月)の平均買い越しペースである約3500億円が本来の姿だとすれば、年間で約4.2兆円というイメージにしぼむことになる。これは2023年とほぼ同じペースであり、円安圧力の大きな後退を想起させる。

事実として非課税枠が増えている以上、2023年以前の買い越しペースに戻る合理的な理由はないが、年間10兆円の買い越し(≒円売り)を当然視するのもまた、過大な想定かもしれない。

「家計の円売り」も前年比で衰え、貿易収支主導で経常収支も改善するのであれば、少なくとも需給面から2025年の円相場が続落するような絵図は描きづらい。

このほか、近年注目される対内直接投資にまつわる円買いフローも総合すれば、2022年や2023年のような円安相場の再現は需給面からは支持されず、円安が焚きつけられるとしても、もっぱら日米政策金利への思惑を理由としたものにならざるを得ない。この点は後編で論じたい。

【後編は12月26日公開予定】

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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