世界市場に君臨する米ドルの支配基盤は、おそらく見かけほど盤石ではない。中国が通貨政策を変更すれば、国際通貨秩序は大きな地殻変動に見舞われる公算が大きいからだ。
中国は現在、複数通貨で構成される通貨バスケットに人民元をペッグする管理変動相場制を採用しているが、理屈からして、いずれはこれを廃止することになるだろう。完全な変動相場制に近づけ、ドルとの連動性を薄める政策に移行するということだ。そうなれば、アジアでは中国を後追いする国が続出し、世界経済のおよそ3分の2を支配下に置くドルの影響力は半減してもおかしくない。
その影響は極めて大きなものとなる可能性がある。政府・民間の両部門で米国がここまで負債を拡大できているのは、多分にドルの特権的地位のおかげだ。米国は今、コロナ禍と闘うため、赤字国債を激しく活用するようになっている。しかしドルの特権的地位が揺らげば、債務の持続可能性に疑問符が付きかねない。
中国の為替管理を緩める必要性はかねて指摘されてきた。中国経済の図体はあまりに大きく、米連邦準備制度理事会(FRB)が奏でる音楽に合わせて踊るのは不可能、という理屈だ。中国の資本規制が多少の緩衝材になったところで問題は解決しない。購買力平価ベースの国内総生産(GDP)で中国は2014年に米国を追い抜き、その後も米欧を上回るペースで成長を続けている。柔軟な為替政策の必要性は高まるばかりだ。
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