2016年11月、米大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利は、人々に衝撃を与えた。この現象を説明するために持ち出されたのが、「ポピュリズム」(大衆迎合主義と訳される)という概念である。
ポピュリズムが湧き起こる原因の1つと考えられているのが、反エリート感情だ。そこで、ポピュリストと呼ばれる政治家は対抗勢力の政治家に「腐敗したエリート政治家」のレッテルを貼り、彼らとの差別化を図るために過激な政策を提唱する。
これは一見、エリートに怒り狂った大衆とそれを感情的に扇動するポピュリストの政治家、という構図のようだが、近年では両者の間には理性的な駆け引きが行われているとする理論研究もある。ここではその新たな見方について論じてみたい。
初めに、ポピュリズムとは何かを改めて確認しておく。「〇〇はポピュリストだ」という主張はむやみに用いられがちだが、それはポピュリズムが漠然とした概念であるためだ。
最近の欧米でポピュリストと呼ばれる政治家が提唱するのは、移民排斥などの極右的主張が多い。しかし歴史をたどれば、小さな政府を掲げる新自由主義的な政策や、再分配を志向する左派的な政策を主張するポピュリスト政治家が存在した。ポピュリズムは左派にも右派にもなりうるのだ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら