タイ北部、ミャンマーとの国境近くに位置する国民党残党の住む村を訪れたときのことだ。その村からわずか数キロメートル離れた山の中に、突然ゲートが現れ、人々の出入りを監視していた。その先はタイ領ではないので、ミャンマーに入国するのかと思いきや、「シャン州独立軍」と称する組織が独自に管理しており、われわれを妨げることはなかった。この場所は真空地帯、ある意味でどこの国にも属さない(政府の管理が及ばない)場所だったのだ。
島国の日本人には到底理解できないことだが、このような真空地帯はこの国境付近に数カ所存在する。村には100人以上が生活しており、彼らは「どこの国にも属していない、パスポートを持たない人々」だと告げられた。
村を歩いてみると、学校では子どもたちが普通に勉強している。住民の老婆に話を聞くと「十数年前ミャンマー政府軍の迫害に遭い、ここに逃げてきた。もう故郷には帰りたくない」と言い、「ここにいる限り、政府も簡単には手出しができない。もし何か起こればタイ軍が助けてくれる」と話すではないか。タイ政府はこのような難民に食料や衣服を与えて保護し、ミャンマー軍が動けば、それを口実に領土拡大を図る構えなのだろう。
この村に暮らすのは老人と子どもばかり。老婆が孫(青年)の写真を見せてくれたが「タイの難民キャンプにいるので、会えなくてつらい」と悲しげに話す。この地がいくら安全でも、村から出られず、まともな仕事を見つけることも難しい。パスポートを持たない彼らにとって、自らの未来を切り開くためには、ミャンマーに戻る選択肢はなく、タイの難民キャンプから難民を受け入れてくれる地域へ脱出を図るしか、方法はない。家族はバラバラになり、再び会えるかどうかもわからない。
山積する少数民族問題
ミャンマーといえば「ロヒンギャ」ばかりがクローズアップされているが、少数民族問題は、そこかしこに存在している。アウンサンスーチー氏もこれにはお手上げだろう。
各国NGOが大挙して支援しているロヒンギャ問題も、解決の糸口は見えない。バングラデシュに逃れたロヒンギャの難民キャンプは、いつの間にか約70万人にも膨れ上がっている。ミャンマーへの帰還については、難民側が「ミャンマー政府による国籍の付与や、安全保障がなければ戻れない」と拒否し、実現しない。一般庶民の犠牲は今なお続いているのだ。
(東えびす)




















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