漠たる非核化目標がせいぜい 取引に長けた大統領でも
4月27日に南北首脳会談が行われてからというもの、トランプ米大統領は、南北対話を裏で仕切っていたのは自分だとのイメージを打ち出そうとしている。確かに、希望の光は朝鮮半島から広がっている。だが、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)委員長との会談が間近に迫ったタイミングでわざわざ主役の座を奪い取ったことを、同氏は後悔することになるかもしれない。
米朝会談に向けて、トランプ氏は資料に目を通したり、専門家の助言に耳を傾けたりといった準備作業を意図的にサボっているはずだ。何しろ、体系立ったブリーフィングを理解する能力を持たないことで評判の大統領である。
しかし、南北首脳会談が感動的なものになったことで、トランプ氏を待ち受けるハードルは一段と高くなった。同氏は取引に長けたディールメーカーを自任し、米朝会談を使って自らの手腕を派手に演出したいと考えている。だが、ディールメーカーとしていくら魔術的な力を持っていたとしても、北朝鮮の核に対する執念が魔法にでもかかったかのように簡単に消えるわけがない。
今後の交渉を通じて可能となるかもしれない非核化目標を、漠然とした言葉で示すのがせいぜいだろう。この手の共同宣言がいかに曖昧模糊(あいまいもこ)としたものとなりうるかは、先日の板門店(パンムンジョム)宣言を見れば予想がつく。南北は核のない朝鮮半島という夢を共有したにすぎない。
最有力のシナリオは、金氏が南北会談以上に踏み込んだ内容を米朝会談で提案してくるというものだ。しかし、それほど大きな譲歩にはならないとみられている。
核保有国の立場を捨て、核不拡散条約(NPT)に復帰することに金氏は抵抗するだろう。曰(いわ)く、非核化は時間のかかるものであり、段階的な措置が必要だ、と。
だが、トランプ氏が「段階的」なるものに応じるとは思えない。「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」の目標と似た何かを手に入れるべく、近道を探るはずだ。在韓米軍が北朝鮮に実力を行使することはないとの劇的な意思表明を行う可能性もある。金氏がこれに興味を示し、在韓米軍の撤退と引き換えに非核化を行う線で手を打つ展開すら考えられる。それでも金氏は、非核化にはしばらく時間がかかると言ってくるだろう。
北朝鮮の刑務所に拘束されている米国人の解放についても、金氏は譲歩するとみられている。
米朝会談は和やかな雰囲気に包まれるだろう。金氏はおそらく、北朝鮮の経済開発に関する自らの計画を披露し、トランプ氏を大いに楽しませるはずだ。何しろ、トランプ一族が経営するような世界的なホテルを持つ一流の都市に平壌(ピョンヤン)を変える、という話なのだから。そして、非核化の前になぜ制裁停止が必要なのか、その理屈をトランプ氏に説くのだろう。
トランプ氏が会談の成功を自慢しようとするなら、この程度の内容ではとても足りない。少なくとも、詐欺に引っ掛かったように見られるのは何としても避ける必要がある。だが、そのためには複数のタスクを同時にこなさねばならないのだ。南北会談による融和ムードを支えつつ、制裁圧力で譲歩せずに済む道を探ることが一つ。日韓との同盟関係を揺るがすような言動も御法度だ。何より重要なのは、少なくとも真の非核化が目標であることを金氏に認めさせ、引き続いての対話と追加の首脳会談開催で合意を得ることだ。
いずれにせよ、米朝会談はトランプ氏が「史上最悪」と批判するイランの核合意と大差ない結果となろう。これについて、トランプ氏は一度、胸に手を当てて考えてみるといい。同氏に内省を求めること自体、どだい無理な話ではあるのだが。






















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