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故郷喪失、賠償打ち切り… さまよう被災者 緊急連載「原発最後の選択」第6回

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福島原発事故は多くの被災者を生み出した。帰る故郷を失った住民の苦悩は深い。

(本誌:岡田広行)

[ポイント1]
酪農を廃業した米倉啓示さんは、原子力発電事故を起こした東京電力に対して故郷喪失への慰謝料などの損害賠償を求める裁判を起こした1人だ

[ポイント2]
原発事故避難者原告の総数は586人。事故から5年、避難指示が解除されて帰還が始まっても、住民の思いは複雑だ

[ポイント3]
東電による営業損害賠償は原発事故で失われた所得を1年ごとに支払うものだが、事業の再建には到底足りないうえ、その打ち切りも迫っている

 

「私が“山地(やまち)酪農”を始めたのは何よりもチーズを作りたかったからです。福島県川俣町で牧場を始める前の約1年、スイスの牧場で実習し、チーズ作りに魅せられた。(およそ30年を経て)やっと本物を作れるようになったと思った矢先に、原発事故ですべてをダメにされてしまったのです」

標高約650メートル。寒風が吹きすさぶ中、牧場主の米倉啓示さん(68)は裁判官や弁護士らを前に淡々と語り続けた。11月10日に実施された、福島地方裁判所いわき支部による、福島県川俣町山木屋地区での現地検証での一場面だ。

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