どうしたドイツ「経済低迷」が当分続く3つの必然 欧州景気に急ブレーキ、ECBは連続利下げへ

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景気の循環的な下押し要因のいくつかは、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和の効果浸透や世界経済の持ち直しに応じて徐々に弱まっていくとみられるが、以下の3点は、継続的にドイツ経済を下押しすることが予想される。

第1に、エネルギー調達費用の高止まりだ。

ロシアによるウクライナへの侵攻以前、ドイツは北海の海底パイプラインを通じて移送されるロシア産の安価な天然ガスにエネルギー供給の多くを依存していた。対ロシア制裁やロシアの報復措置でロシアからのガス輸入を停止して以降は、アメリカや中東からの液化天然ガス(LNG)などで代替するが、調達コストの上昇に見舞われている。

ドイツの生産者段階のエネルギー価格は、2022年秋のピーク時対比で3割近く下落しているが、ウクライナ侵攻以前と比べて1.5倍以上の水準にある。エネルギー集約度の高い化学産業などでは、事業採算の悪化で製造拠点を国外に移転する産業空洞化も起きている。

雇用に悪化の兆し、自動車工場閉鎖の激震

第2に、雇用環境に変調が広がっていることだ。

製造業部門の不振が続くなか、これまでドイツが深刻な景気後退に陥ってこなかったのは、雇用が維持されてきたことがある。

だが、8月の就業者数が11カ月ぶりに前月対比で減少に転じたほか、先行性のあるPMIの雇用判断は、製造業とサービス業を合成した計数で、6月以降、増加・減少の分岐点である50を割り込んでいる。9月は一段と水準を切り下げ、先行きの雇用環境悪化を示唆している。

ドイツの大手自動車会社は9月2日、欧州市場の需要落ち込みや中国の電気自動車(EV)メーカーとの競争激化を受け、コスト削減が必要として、創業以来で初となる国内の工場閉鎖を検討していることを明らかにし、関係者に激震が走った。

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