円安阻止の「通貨防衛戦」はこれで終わりではない 次なる防衛戦までに通貨政策をどう立て直すか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アメリカが利下げ局面を経て、次の利上げ局面に入ると、円安再燃は間違いない。現在の水準からさほど円高に振れないなら、円安局面が始まる時の発射台は高くなる。

2022年来の円安は115円前後から始まり、162円前後まで進んだ。47円ほどの円安だ。今回の円安是正で例えば130円に戻しても、そこから47円の円安が進むなら、今度は180円が視野に入る水準まで売られる。

日米経済を比較すると、人口減少・高齢化が進む日本は低成長・低金利が常態化するだろう。一方、アメリカ経済は絶え間のない移民流入で人口は増大。経済も新陳代謝が速く、成長率は高めに推移するだろう。

このことは、金利差は縮小しても限定的で、次の拡大ペースも速い可能性、つまり、アメリカ経済が利上げ局面に入るたびに円安が再燃し、その都度、財務省・日銀は通貨防衛に追われることを示唆する。

再び迎える通貨防衛、戦線拡大には限界がある

さほど指摘されないが、財務省と日銀が円安阻止で介入と利上げを繰り出す通貨防衛戦を展開したのは、1973年の変動相場制に移行してから今局面が初めてだ。なお、1998年に財務省は円安阻止の介入を実施したが、金融政策は動いていない(以前のコラムを参照)。

今後は、アメリカが利上げ局面に入るたびに介入・利上げで円安を阻止する「通貨防衛戦」が展開され、介入の規模と利上げの幅が拡大する恐れもある。通貨防衛の戦線拡大である。

考えるべきは、戦線拡大には限界がある、ということだ。

円安阻止の介入は、保有する外貨準備が上限となる。一方、経済状況を無視して利上げを続けることもできない。いずれかの時点で防衛戦をあきらめ、円安を変動相場に委ねる決断が必要となるだろう。

それでも円安を阻止したければ、変動相場制をあきらめ、固定的相場制の選択となる。次の円安局面が到来するまでの間、日本として通貨政策の在り方を再考したほうがいい。

窪園 博俊 時事通信社解説委員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くぼぞの ひろとし / Hirotoshi Kubozono

1989年時事通信社入社。97年から日銀記者クラブに所属し金融政策や市場動向を取材。ツイッターなどで「本石町日記」として発信し、金融業界はじめ閲覧者が多い。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD