円安阻止の「通貨防衛戦」はこれで終わりではない 次なる防衛戦までに通貨政策をどう立て直すか

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だが、すぐに円安は再燃する。アメリカのインフレは根強く、FRBの引き締めが続いたからだ。同年春、黒田氏の後任となった植田和男総裁が大規模緩和を継続したことも円安を助長した。

2024年春にマイナス金利を解除したものの、追加利上げに慎重とみなされ、4月末に円は160円台に急落。財務省は再介入に踏み切った。だが、なおも円安は続き、7月初旬には162円前後に。財務省は介入を続け、日銀は追加利上げに踏み切った。そして、アメリカの利下げが視野に入り、やっと円安に区切りがついた。

この間の政府・日銀の対応を総括すると、金融政策と為替政策の足並みの乱れが目立ったのは否めない。前者は日銀、後者は財務省が所管する。

円安を静観し、助長した日銀

諸外国では、両政策は「通貨政策」として中央銀行の単独所管、あるいは「為替」は政府と中銀の共管となる。日本は珍しいことに完全分離だ。それでも足並みがそろえば問題ないが、今回の円安局面では残念ながら整合性が取れたとは言いがたい。

急速な円安は、中小企業や家計に打撃となり、その影響を緩和すべく、財務省が介入に乗り出したのは正しい。問題は、日銀側の対応だ。

「物価が供給要因を除いて2%程度で安定するには緩和的な金融政策が望ましい」との姿勢が円安静観の印象を与えた。為替は所管外とはいえ、円安助長の原因となった。この結果、財務省の介入効果は減衰。必死に介入しても、日銀の緩和姿勢で台無しになる場面があった。

ここで記しておきたいのは、2022年秋と2024年春の介入は、日銀の責任が大きいことだ。いずれも総裁会見がハト派的な内容と受け止められ、円安を加速させたからだ。

やっと金融・為替政策の足並みがそろったのは7月に入ってからだ。財務省はまず、受け身だった介入を能動的なものに変えた。それまでは、加速した円安を食い止める受け身の介入だったが、円高に振れやすい状況で円高を促す能動的な介入に切り替えた。

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