円安阻止の「通貨防衛戦」はこれで終わりではない 次なる防衛戦までに通貨政策をどう立て直すか

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具体的には、アメリカの経済指標が悪化してドル安・円高が進む中、追い打ち的なドル売り・円買い介入を行った。円安反転を目指した格好であり、呼応するかのように日銀は7月末、追加利上げに踏み切った。会見した植田総裁はタカ派姿勢をアピールした。

このタカ派会見は、不運にもアメリカの雇用統計の悪化と重なり、日経平均株価の大暴落を招いたが、日銀・財務省が円安阻止で歩調を合わせた「余波」と受け止めるべきだろう。

結果論ながらも、日銀が物価2%の安定達成に固執せず、もっと早い段階で大規模緩和の修正に乗り出していれば、円安加速は限定的で、財務省が何度も介入する必要はなかった可能性がある。実際、株大暴落を受けて開催された国会の閉会中審査では、日銀の政策修正の遅さが批判されたが、この批判には一理ある。

まったく円高とは言えない「円高」に落ち着く

今後を展望すると、日銀の追加利上げが続く一方、FRBの利下げ局面入りで、日米金利差は縮小。円高への揺り戻しが続く公算が大きい。2022年からの円安局面はいったん終焉を迎え、輸入インフレは一服。生計費の軽減によって家計は一息つけるだろう。

ただし、円高の程度は限定的にとどまる可能性が高い。金利差は縮小しても、「需給面では円が売られやすい状況に変わりはない」(外資系ファンド)ためだ。

貿易収支は資源価格の落ち着きで大幅な赤字から抜け出すが、生産拠点の海外シフトでかつてのような黒字体質には戻らない。むしろ、対外投資の根強さから、為替市場では「恒常的に円売りのフローが出やすい」(大手邦銀)とみられる。

現行水準から円高に大きく振れても、かつて100円を突破した超円高の時代の感覚から言えば、「まったく円高とは言えない水準で落ち着く」(同)と見たほうがいいだろう。

問題は、その先だ。

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