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消費税10%の先を議論しよう 全世代型社会保障を目指すなら

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【今週の眼】早川英男 富士通総研エグゼクティブ・フェロー
はやかわ・ひでお●1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2013年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

今回の解散・総選挙はサプライズと混乱に終始したが、もともとは安倍晋三首相が「消費増税による税収の使途変更について民意を問う」として行われたものだった。首相に対し「さらなる財政規律の弛緩」という批判が聞かれるが、筆者の見方はやや違う。

第一に、この批判は建前論によるものだろう。しかし、2020年度のプライマリーバランス黒字化が無理なことは誰もが知っていたし、識者の多くは「19年の増税もまた先送りされる」と見ていたのではないか。この本音と比べれば、増税断行を約束しただけマシだと筆者は考える(ただ、首相が「リーマンショック並み」の逃げ道を残した点は、16年に見送りをした前例があるだけに心配ではある)。

第二は14年4月の反省だ。このとき、税収増の大部分が財政再建に充てられた。「財源の裏付けなく社会保障給付の増大が進んできたのだから、まずは借金返済を優先」という論理はわからなくはない。しかし増税が行われても、そのメリットが何も感じられなかったため、国民が増税への反発を強めたのではないか。その結果、増税自体が進まなくなってしまうのであれば本末転倒である。

第三に、小泉進次郎氏らが従来訴えていた「これまで高齢者福祉に偏ってきた日本の社会保障を全世代型に変えていく」という主張は正論である。高齢者福祉はすでに現実となった超高齢社会への適応として不可避だが、長い目で見て人口減少そのものを食い止めていくには、子育て世代への支援が不可欠だからだ。

だが、消費増税による税収の使い道だけを議論するのではあまりにも無責任である。もともと、高齢者福祉中心の現行社会保障制度を維持するだけでも消費税率10%では明らかに不十分だった(経済学者・エコノミストの相場観では20%以上が必要)。マクロ経済スライドの導入で公的年金の持続可能性は高まったが、このままでは低年金世帯の収入は生活保護水準を下回ってしまう。数年後に団塊世代が後期高齢者(75歳以上)になることに備えるには、待遇改善を進めて介護職員を増やすことが急務となる。

そこに子育て世代への支援を加えるなら、消費税率10%はまだ入り口にすぎない(だからこそ国民の納得感が重要なのだ)。もちろん、医療分野ではICTの活用などを含めて効率化の余地は極めて大きい。介護については、混合介護を通じたサービス産業化の推進を期待できる。また教育費の支援も、幼児教育、社会人教育の強化や給付型奨学金の拡充など真に効果あるものに絞るべきだ。それでも全世代型の社会保障制度を展望するなら、10%から先の議論を直ちに始める必要がある。

首相提案はそれに先立つ民進党・前原誠司氏の構想と大枠一致するものだったため、筆者は選挙戦で社会保障と税負担の議論が深まることをひそかに期待していた。この期待は増税凍結を唱える希望の党の登場で崩れてしまったが、問題の本質が変わるわけではない。選挙後の国会では、全世代型社会保障が目指すこの国の将来像と、そのための費用負担のあり方に関する真剣な論戦が望まれる。

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