客観的な根拠に基づく教育政策の立案へ 『令和元年度 文部科学白書』を読む
一方、教師の長時間労働や採用選考試験の競争率低下は深刻なレベルとなっている。学校のICT環境は脆弱で地域間格差も大きく、白書では危機的な状況と表現。こうした現状を受け、中央教育審議会に、新時代に対応した義務教育と高等学校教育のあり方、増加する外国人児童生徒への教育、教師や教育環境整備について諮問している。
公立学校における働き方改革については、所定の勤務時間を超える在校等時間の月45時間、年360時間の上限ガイドラインが示され、法的根拠のある指針に格上げされている。また、休日のまとめ取りの推進については、地方公共団体の判断によって導入が可能となるよう法改正が行われた。今後、勤務時間管理をはじめとした働き方改革を進めていくうえで、教師でなくてはできない業務とそれ以外の業務の仕分けをするなど、業務内容の見直しが欠かせない。
少子化の流れは学校づくりにも影を落としている。小中学校では一定の集団規模の確保が望まれ、12学級から18学級、通学範囲は小学校で4km以内、中学校で6km以内という適正規模を示している。が、この10年で小中学校の1割にあたる約3000校が減少し、標準規模に満たない学校は約半数に上っている。小規模化に伴う教育面でのデメリットが懸念される一方で、地域コミュニティーの核としての学校の重要性も無視できない。少子化に伴う課題の解決に当たって、新しい教育モデルの創出が期待される。
複雑に絡み合った課題に対してどのような解を見いだしていくか。客観的な根拠に基づく政策立案を実現していくためにも、データの収集と検証をベースにした幅広い議論が欠かせない。その意味でも、例えば今回の休校措置についても、具体的な取り組み内容とその検証が、次の政策立案に生きていくのではないだろうか。(写真:iStock)
制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム
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