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超低金利はむしろ景気に逆効果 欧州と日本がはまる「金融ブラックホール」

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毎年夏に米ジャクソンホールで開かれる経済シンポジウムは、世界の中央銀行幹部や経済学者に内省の機会を提供する。だが、今年はテーマが「金融政策の課題」だったにもかかわらず、独善ぶりを助長するだけに終わった可能性がある。危険なことだ。

率直にいって、インフレ目標を多少いじったくらいでは問題に十分対処したことにはならない。先進国では物価上昇率の目標未達が延々と続いている。日本銀行の大規模な金融緩和がインフレ率の上昇にまるでつながっていないことからしても、これまで自明とされてきた理論は誤りだったと考えたほうがよい。中央銀行は金融政策によって物価上昇率をコントロールできるとは限らないのだ。

欧州と日本は「金融ブラックホール」とでもいうべき状況にはまっている。金利が低下しすぎて金融緩和が効かなくなる流動性のわなに陥っているのだ。米国もあと1回景気後退に見舞われれば利下げ余地が枯渇し、同じ運命となる。

これらはいずれも「長期停滞」を裏付ける動きといえよう。それどころか、問題の根は一般に考えられている以上に深い。筆者(サマーズ)が長期停滞論を提起した2013年に比べると、政府債務残高は大幅に拡大し、金利は名目・実質ともに大きく低下した。それでも、名目GDP(国内総生産)の成長率は大幅に鈍っている。これが示唆するのは、総需要を低下させる何か別の要因が働いているということだ。

現在主流となっている政策議論では、とにかく実質金利を引き下げれば長期停滞は克服できるとされている。こうした見方に従うなら、差し迫った問題は実質金利が高すぎることであり、真っ先に中央銀行と金融政策に解決策を求めるのは当然ということになる(編集部注:実質金利は名目金利の引き下げのほか、緩和で期待インフレ率を高めることでも低下する)。

だが、事はそんなに単純ではない。利下げによる景気刺激効果が弱まった、あるいは逆に景気を冷やすようになったことを示す理由は確かに存在する。まず、耐久消費財支出は金利に敏感に反応するはずだが、GDPへの貢献度は下がっている。市中銀行も低金利のせいで収益基盤がむしばまれ、貸し出し能力の低下を招いている。

薬も過ぎれば…

低金利も度を越せば、需要に水を差す場合があるということだ。こうなると、金融政策では完全雇用を実現することも、インフレ率を引き上げることもできなくなる。

仮に利下げで短期的に需要を喚起することができたとしても、低金利の副作用が悪さをし、結果的にはプラスの効果は帳消しとなるだろう。これはマクロとミクロの両面から説明がつく。

マクロ的には、低金利と過剰流動性は資産バブルの形成につながるが、バブルはいずれはじける。

ミクロ的には、低金利から金融機関の収益基盤が損なわれるほか、生き残りすら怪しい限界企業の資金繰りを助け、資本の効率的な配分、すなわち企業の新陳代謝を妨げる。このような経済はどこか不健全なものだ。

つまり、長期停滞への対策として利下げは力不足などころか、むしろ逆効果となりうる。だとすれば、緩和を深掘りしようと中央銀行が知恵を絞ること自体がそもそも余計なのだ。求められているのは、金融政策が効果を生んでいない現実を認め、財政政策などで需要をテコ入れするよう政府に奮起を促していくことにほかならない。

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