中国自動車市場で求められる「イノベーション」 周 磊 デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

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中国市場における主要プレーヤーの動向

General MotorsやVolkswagen(以下、VW)など中国で高いシェアを誇る欧米系完成車メーカーは、進出タイミングが早く、中国における事業が成熟している。すなわち、研究開発から販売までのバリューチェーンのステップごとに現地化が着実に進んでいる。そして、さらなる市場シェア拡大のため、両社は生産能力の拡大や中国での研究開発能力の向上を図っている。たとえばVWには華南地域や内陸の西部地域での新工場の設立の動きが見られる。両社にとって中国市場はグローバルで見ても大きな収益源となっており、ここで得られたキャッシュは企業全体での成長の原動力となっている。バリューチェーンで見ても、中国は生産のみならず、研究開発でもグローバルでの水平分業の一拠点として機能している。両社は徹底的な現地化を進め、全工程を中国で手掛けられるよう絶えず投資することで、現地ニーズにより合致した自動車作りを実現してきたため、高いシェアを維持できているといえる。また、欧米系完成車メーカーは積極的に運転支援システムを搭載した車種を中国市場に投入することでアピールし、予防安全の領域での取り組みが活発化している。

2番手集団に位置する日系完成車メーカー各社も、バリューチェーンの現地化推進により、中国市場でのプレゼンス向上を図っている。具体的には、商品企画面では低価格自主ブランドの導入、研究開発面では中国市場向けの製品開発能力の向上、調達面では現地サプライヤーからの調達率向上、生産面では現地生産能力の増強、販売面では内陸都市への参入などが挙げられる。

次に中国の国内資本系完成車メーカーについては、海外展開や従来の低価格車から中高級セグメントへの車種層拡大などにより、積極的に規模拡大を図っている。一部の完成車メーカーはブラジル、インド、タイ、インドネシア、エジプトなどに生産工場を設立するなど、新興国市場を中心に海外展開を積極化している。また、吉利汽車などの完成車メーカーは外資系の牙城であった中高級セグメントに近年進出しており、衝突安全に加えて積極的に予防安全も新車種に搭載し、安全性をセールスポイントとして全面的に打ち出している。

また、自動車部品市場を見ると、中国市場全体では2001~2009年までの期間で、年平均約23%で成長している。今後予測される中国からの自動車輸出台数の拡大に伴い、中国の自動車部品市場はさらなる成長が見込まれる。

製品種類別に見ると、カーエレクトロニクスの中心部品のうち、パワートレインは外資系メガサプライヤーが市場の大部分を握っている。たとえばエンジンマネジメントシステム(EMS)は、外資系が2009年時点で市場の96%を握っているiii)。一方、カーエレクトロニクスのなかでもカーナビやカーオーディオなど、インフォテインメントは国内資本系が中心となっている。

このようななかで日系部品メーカーは日本国内同様、系列の完成車メーカーに依存しており、欧米系部品メーカーと比較して中国系や外資系の完成車メーカーとの取引は限定的である。また、欧米系部品メーカーはすでに製品の単品売りからソリューション営業へと転換しているのに対し、日系メーカーはまだこれからという段階である。

そして、次世代車への取り組みを見ると、国内資本系各社は、10年以上にわたり次世代車の開発を継続しており、政府プロジェクトを通じて技術力を強化している。外資系も含め、各社は自社の強みを生かしながら内燃機関のダウンサイジング、ハイブリッド車、PHEV、EVなどの「百花斉放」の技術戦略を打ち出している。また、政府は各社の次世代車への取り組みを、大規模な実証実験計画である「十城千両」などを通じて支援し、普及を図っている。

EVの今後について、現時点では一部地域でのローエンドの低速小型EVと、ハイエンドの普通EVに市場が二極化しているが、技術革新に伴い今後は双方がミドルレンジに領域を拡大し、競争が激化すると考えられる。ハイエンドの普通EVは、コスト低減努力や量産効果を通じた低価格化が、ローエンドの低速小型EVは性能や品質の向上と政府認可の獲得が求められる。

また、中国における次世代車市場の成長により、基幹部品である動力バッテリー、モーター、インバーターといった「三種の神器」が新たに必要となる。これらはまさに日本のお家芸ともいえる分野であり、日系の電池・電機・素材メーカーなどに、従来と比べ格段に多くの商機が生まれているといえよう。

次世代車においては世界共通の標準規格策定がグローバルでの普及のための大きなカギとなっている。日本を含む各国とも、世界最大の自動車生産・販売拠点である中国も含めた共通標準規格を策定することが、次世代車の普及にとって重要である。

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