再エネ業界に激震、バイオマス燃料で「認証偽装」 取引していた三井物産や伊藤忠はどう対応するか
国際的な森林認証制度を運営しているFSCは10月19日、ベトナムの木質ペレット販売最大手のAVP社が2020年に販売した木質ペレットで虚偽表示を行っていたと発表した。取引のあった日本企業の対応も問われている。
「ベトナム産木質ペレットの相当量は認証偽装された不正なものではないか」。バイオマス業界関係者の一人が筆者にこう打ち明けたのは、3年前のことだった。
木質ペレットは、木くずを圧縮して円筒状に固めたもので、長さ4~5センチメートル、直径は6ミリメートル程度。再生可能エネルギー発電の一つであるバイオマス発電の燃料として利用されている。
日本にとってベトナムは木質ペレットの最大の輸入先だ。認証とは、自然生態系に配慮していることなど、適切に管理されている森林から生産された木材であることを専門機関が確認・証明する仕組みだ。
そして問題の所在について知ってから3年、取材を続けるうちに前代未聞のスキャンダルが明るみに出た。
国際的な森林認証制度を運営しているFSC(ドイツ)は10月19日、ベトナムの木質ペレット販売最大手のAVP社が2020年に販売した木質ペレットで虚偽表示を行っていたと発表。同社が購買伝票を偽造し、木質ペレットの製造に使用した木材がFSC認証の木材であるかのように「大量の虚偽表示」をしていたことを明らかにした。
三井物産や伊藤忠商事が取引先として判明
東洋経済の取材で、三井物産、伊藤忠商事、JFE商事がAVP社と取引していたことを認めている。中でも三井物産は日本企業としては最大規模の取引をしていたと見られ、2018年に取引を開始した後、直近の取引数量は「年間数十万トン」(同社)にも及ぶという。
バイオマス業界関係者の話を総合すると、三井物産がAVP社から購入した木質ペレットは、東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社であるJERAの常陸那珂火力発電所をはじめとした国内各地の火力発電所およびバイオマス発電所に納入されたとみられる。
バイオマス専焼発電所でメインの燃料として使用されているほか、一部の火力発電所では木質ペレットを石炭に混ぜて発電用燃料に使っている。そして、こうした発電所の再エネ電力はFIT(固定価格買取)制度に基づき、国民負担によって高い価格で買い取られている。
認証を得ているということは、発電用燃料が自然環境などに配慮されて生産されたサステナブル(持続可能)な燃料であることを意味しており、「1キロワット時当たり24円」という、高値でのFIT買い取り価格の根拠となっている。つまり認証が偽装されていたということは、FIT制度の信頼性を大きく損ないかねない。
一体何が起きているのか。まず、バイオマス発電の仕組みについて簡単に振り返ってみたい。
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