核燃料サイクル破綻の必然 岸田首相が見過ごした
原子力政策の中核を成す核燃料サイクル。その破綻がシミュレーションからもあらわに。
原子力発電所で一度使った核燃料(使用済み核燃料)を再処理・再利用する核燃料サイクル政策の是非をめぐり、9月29日投開票の自民党総裁選挙で論戦が繰り広げられた。
有力候補だった河野太郎・行政改革担当相(当時)が「核燃料サイクル政策の見直し」を打ち出したのに対し、岸田文雄・前政務調査会長(同)は「核燃料サイクル政策をやめた場合、使用済み核燃料の行き場がなくなる」と主張した。岸田氏が勝利し、首相に就任。電力業界を揺るがした核燃料サイクル見直し論は封じ込められた。
しかし、岸田首相が言うように核燃料サイクル政策を堅持し、その中核を成す日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)が運転を開始すれば、後戻りは極めて困難になる。それで大丈夫なのだろうか。
試算結果が物語る窮状
核燃料サイクル政策がすでに行き詰まっていることが今般、NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長の推計で明らかになった。原発29基が稼働し、うち14基でウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用するプルサーマルが実現した場合、六ヶ所再処理工場の稼働が約40年の運転期間を経て2063年度に終了した後に、約1万3600トンの使用済み核燃料が再処理できずに残ってしまう。つまり、日本がこれまで政策として掲げてきた使用済み核燃料の全量再処理が破綻してしまうというのである。
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