「勝ちに不思議の勝ちなし 根源的な治療が視界に入った」 インタビュー/エーザイCEO 内藤晴夫
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ないとう・はるお 1947年生まれ。74年米ノースウェスタン大学経営大学院修了。75年エーザイ入社。研究開発本部長などを経て88年社長。2014年から代表執行役CEO。創業者・内藤豊次の孫。(撮影:今井康一)
「アデュヘルム」は世界で初めてアルツハイマー病の原因に直接作用する薬である一方、その承認をめぐっては物議を醸している。創業家出身でエーザイを30年以上率いる内藤晴夫CEOに、今回の承認について直撃した。
──ついにアルツハイマー新薬が承認されました。
「アリセプト」でアルツハイマー病の薬物治療の歴史の1ページ目を開いたのはわれわれだと自負している。それから25年もかかってしまったが、ようやくその2ページ目を開くことができた。
アリセプト発売前から、認知症患者のコミュニティーと長く付き合ってきた。今回の承認によって、そういった方々に対し約束してきた責任の一端を果たせる。
──アデュヘルムは、承認までにかなりの紆余曲折がありました。
今回の承認までには2回、絶対的な危機があった。1回目は、臨床試験(治験)フェーズ3で第三者委員会から中止勧告を受けたとき。もう1回は、FDA(米食品医薬品局)の諮問委員会において承認エビデンスがない、と圧倒的な差で判断されたときだ。
そうした危機を乗り越えて今回承認に至った。普通だったらありえないことだが、有名な格言とは逆に「勝ちに不思議の勝ちなし」だった。
アデュヘルムには勝ちの要因がしっかりあった。その1つは、治験の途中で投与量をアップしたことだ。体重1キログラム当たり6ミリグラム が上限だったものを、10ミリグラムまでアップしている。薬剤開発は、正しい仮説、正しい対象患者、正しい用量、正しい評価項目の4つがそろえば必ず成功する。
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