協力パートナー:シー・エヌ・エス、シャノン、ヤマノ印刷
ディスカッションI
取材メディアのあるべき姿とは?
~記事における「信頼」とは?現状、そして課題について議論~
第1部では、オンラインメディアの3人の編集長がネットメディアの信頼性を議論した。
文春オンライン
編集長
2017年1月にオープンした文春オンライン編集長の竹田直弘氏は、最近の雑誌ジャーナリズムについて「『ちゃんとしている』と評価されるようになり、受け止められ方の変化を感じています」と手応えを語る。信頼されるには、きちんとした取材が大前提だが、その上で「書けない記事はほとんどない」という文春の姿勢を強調。「読者は、大人の事情を見透かすので、書くべきときにきちんと書かないと信頼が失われます。オンラインでも本当のことを伝えていきたい」と述べた。
現代ビジネス
編集長
昨夏にリニューアルした現代ビジネス編集長の川治豊成氏は「信頼のためになすべきことは紙もウェブも大きく変わらないと思います」と述べ、不明瞭な一人称の記事を廃して、書き手の明示に取り組む。また、アーカイブに堪える読み応えのある記事を積み上げることで、読み手からの信頼を得ると同時に、ライターにとっても魅力的な媒体となって書き手からも信頼されることの大切さを指摘。クリックされないと始まらないネットメディアの特性上、タイトルは刺激的になりがちだが「内容を伴わせることが大事」と訴えた。
東洋経済オンライン
編集長
東洋経済オンラインの山田俊浩編集長は、品質優先のために時間とコストをかけて校閲・校正を組み込んだ編集体制を敷いていると説明。「それでも間違いは起きます。事実誤認などの重大な誤りは履歴を残すなどきちんと訂正することが大事」と述べた。また、記事とともに表示する読者コメントからは質の高い有益な示唆を得られると主張。「ネットには訂正が有効に機能する仕組みがあり、従来型のメディアよりも信頼性は高くなると考えています」と、ネットの強みを示した。
(モデレーター)
ジャーナリスト
不正確な記事、無断転用が明らかになったネットメディアの問題では、モデレーターの大西康之氏が、主力の書き手である外部ライターの選び方や、将来を担う若手育成について問題提起。新たに仕事をする書き手とは、必ず直接会うことにしているという竹田氏は「信頼できる情報は安くない」と述べた。ネットでは柔軟に試すことが可能という川治氏は「ネットのほうが新しい書き手を発掘しやすいと思います」と若手登用に積極姿勢を見せた。山田編集長は「分野の専門家であれば重要な書き手になれます」という可能性を示した。
また、大西氏は、信頼性を高める対価としてのコストを払うためにも稼げることが大事と指摘。竹田氏は「コンテンツをいかに売るかがポイント」と課金制導入も視野に入れた。川治氏は「ネットでの稼ぎ方を見つけるのは後の世代になるでしょう」と、十分な収益体制の構築にはまだ時間がかかるとの見方。山田編集長は「ページビューなどを着実に伸ばすことで、広告収入も増えます。そのためには信頼が大事です」とまとめた。

ディスカッションII
偽物を拡散させない仕組みとは?
~「情報の信頼性」とどう向き合っているのか。現状と課題を議論~
第2部では、メディアから受け取った記事を配信するキュレーションメディアが、フェイクニュースの流布防止などに果たす役割を検討した。
ソーシャルカンパニー
代表取締役
米国のネット事情に詳しいソーシャルカンパニーの市川裕康氏は、フェイクニュースや収益を狙って読者をだまそうとする広告記事など、いくつかのタイプを紹介。対策として、一般読者が誤った情報を鵜呑みにしないようにするメディアリテラシー教育の重要性を訴えた。「米国ではメディア企業が社会的責任として、リテラシープログラムを展開しています」と述べ、日本企業の取り組みにも期待した。
グライダーアソシエイツ
代表取締役社長
ライフスタイル情報中心のキュレーションサービス、アンテナを運営するグライダーアソシエイツの杉本哲哉氏は「当社が独自に記事の真偽を保証しようとすると、膨大なコストがかかり難しい」と話す。同社は、約300の媒体と契約を結び、受け取った記事を7チャンネルに分けて配信する。イメージ判定のテクノロジーを使って、宣材写真の利用比率などから信頼性を監視し、スタッフが全配信記事に目を通すが、万全ではない。杉本氏は「真偽や無断転用を気にする読者が少ないのも現実」と、受け手側の課題も指摘した。
スマートニュース
執行役員
スマートニュースの藤村厚夫氏は、「震災時に必要な情報を生活者に伝えるべきメディアが機能しなかった」という思いから「人々のニーズに合わせて良質なコンテンツを届けられる仕組みの構築を目指してきた」と語った。その同社も架空記事の露出などの苦い経験があり、問題のある記事を排除するため、人手を含めた重層的なチェック体制を構築。コンピュータアルゴリズムを使った記事の選別にも力を入れているが「テクノロジーがフェイクニュース拡散に加担させられるケースもあるので、そうした事態を防ぐ力も必要です」と難しさに触れた。
ディスカッションで、山田編集長は、提携メディアの選別によって信頼を担保する可能性を質問。杉本氏は、写真や広告などの問題をチェックした結果、当初約400社だった媒体との契約を一時は約200社まで減らしたと説明。藤村氏は「それぞれに報道方針がある場合は、各記事の判断を尊重するのが基本だが、単なるモラル逸脱や広告コンテンツを混入させているような場合などは契約解除もあり得ます」と答えた。
今後について、藤村氏は「業界としてもフェイクニュースへの問題意識や知見を共有することを対応すべき」という考えに言及。杉本氏は「大衆だけに記事の真偽の判定を委ねず、メディアが本物を示していくことが重要」と訴えた。山田編集長は、メディアの収入を支える広告主向けに、信頼性のある記事作成プロセスを監査する仕組みを提案。市川氏が、米国のテレビ番組を例に「信頼されるためにあるべき姿を、メディア同士が公開の場で議論してほしい」と締めくくった。