GMI report No.3
グローバル経営の作法
日置 圭介 デロイト トーマツ コンサルティング パートナー
組織特性と収益性の関係性
今回の分析では、日本および米国、欧州の上場企業から主要なインデックスを構成する企業を対象とした*2。組織特性としては、「売上高規模」と「多角化度合い*3」を、収益性には、本業で稼ぐ力を表す「営業利益率」を取り上げ、それぞれを4段階に分類した。
日本企業の組織特性として、巨大規模の企業が少ない、多角化傾向の企業が多い(専業化企業が少ない)(図表1)という特徴が見られた。また、収益性の分布を見ると、極端に収益性が高い、もしくは低い企業の割合は小さく、一般的にいわれるように企業間格差が小さいことが確認された(図表1)。欧・米企業を見ると、欧州には小規模な企業が多く、反対に米国は比較的規模の大きい企業が多い。多角化度については、両者共に日本よりも専業系の企業割合が高い。また収益性については、日本と比較して企業間格差が大きいが、そもそもの利益水準の高さにあらためて気づく。
次に、組織特性と収益性との関係を見てみると、日本企業では、小規模企業のリターンが図抜けて高い、また、多角化度が低いほどリターンが高まることがわかった(図表2)。当然、ボラティリティ(変動幅)には注意を払わねばならないが、想像に難くない「教科書的」な結果といえよう。一方、欧州、米国企業では、規模の小さな企業は収益性が著しく劣る傾向にあったが、多角化度と収益性との関係性には明確な傾向は見られなかった。
さらに、組織特性の2つのカテゴリを掛け合わせ、16セルからなるマトリックスを作成、各セルの収益性を確認したところ、日本は、ここまでの結果と同様「小規模」で「専業化」な企業ほど収益性が高くなる傾向が表れた(図表3)。欧・米系は、これまでこれといった傾向が見えなかったが、「中規模」で「専業化」系の企業の高収益性と共に、「巨大規模」で「多角化」をしている企業の収益性の高さが確認できた。閾値いかんで印象は変わるかもしれないが、欧・米に共通して表れたこの傾向、特に「巨大規模」×「多角化」セルにおける日本企業との差が、グローバル化時代の企業経営のあり方の一端を示しているのではないかと考える。