GMI report No.3
グローバル経営の作法
日置 圭介 デロイト トーマツ コンサルティング パートナー
日本を基点にグローバルビジネスを牽引
グローバルに戦うことを選択したのならば、前出の作法を身に付けた上で、日本的あるいは日本人的要素を上乗せする発想を持ちたい。間違っても作法自体を、文化、言語、地理、すべてにおいて同質性が高く心地の良い、古き良き日本に求めてはならない。身に付けた作法を日本人の得意とする柔軟性や強いこだわりを持って使いこなす。日本らしさにも“現代語訳”が必要なのだ。
また、とかく日系対外資という対立軸をつくりがちだが、突き詰めて考えれば、グローバルかノングローバルかが企業の形を決めることも忘れてはならない。
そして、グローバル企業になるということは、本来、母国日本を基点にグローバルに経営することであり、やみくもに海外に出て行くことではない。この視座は、日本再興戦略において「立地」という言葉で語られているように、日本を世界一ビジネスのしやすい国にするという、時の政権の方向とも合致している。日本を基点に世界のビジネスを牽引する未来を皆で実現していこう。
photo: Hideji Umetani
注釈
*1:OECD“Economic Outlook No.91.”
*2:日本はTOPIX構成銘柄、米国はNYSE総合指数構成銘柄、欧州はFTSE総合指数(イギリス)、CAC全株指数構成銘柄(フランス)およびCDAX指数構成銘柄(ドイツ)を分析対象とした。
*3:今回は全体売り上げ(100%)から売上高構成比率が最大の事業の売上高構成比率を差し引いた数字を使用。たとえば、売上高構成比率が最大のA事業の売上高構成比率が20%の場合、多角化率は80%となる。
*4:成功と衰退の主な参考文献:ジェームズ・C・コリンズほか『ビジョナリー・カンパニー 1~4』山岡洋一ほか訳、日経BP社、1995~2012年。
ジャグディシュ・N・シース『自滅する企業─エクセレント・カンパニーを蝕む7つの習慣病』スカイライト コンサルティング訳、英治出版、2008年。
ポール・キャロル、チュンカ・ムイ『7つの危険な兆候─企業はこうして壊れていく』谷川漣訳、海と月社、2011年。
ジョセフ・バウアー、ハーマン・レオナード、 リン・ペイン『ハーバードが教える 10年後に生き残る会社、消える会社』峯村利哉訳、徳間書店、2013年。
デロイト トーマツ コンサルティング パートナー
電機、自動車、IT、小売、エネルギーなど、多業種の日本企業におい て、グローバル本社や地域統括、ファイナンス機能などを対象とした、 グローバル組織/機能戦略の構想、 実行を支援。現在は、GMIのリードパートナーとして、日本企業のグローバル競争力強化に向けた提言活動を推進。早稲田大学大学院会計研究科 非常勤講師。日本CFO協会 主任研究委員。