分析力を鍛えるための3つの方策 ものごとを「分かる」ということ
(3)体系化へのトライ
そして、この2 番目の訓練の延長線につながるのが、第3 の方策である“体系化”である。体系化というのは論理的分析の緻密な完成形である。2 番目で紹介したMECEの完遂は、どうしても平板な分類結果になりがちである。さまざまなクライテリアを試してMECEを完成させる訓練は水平的な分析力の強化には有効であるが、思考の抽象度を上げたり下げたりする抽象的思考力を強化するためには十分ではない。体系図を作るということは、MECEな分類を何枚も重ねて積み上げていくようなものである。
正しい体系図においては、すべての枝分かれごとに適切なクライテリアの設定が求められ、すべての枝分かれごとにMECE が完結している。枝分かれごとのクライテリア設定とMECEな展開という体系図のルールが、その分析の論理的整合性と完結性を担保するのである。
こうした体系図を自分で構築してみることは、これ以上ない分析力と論理的思考力強化の鍛錬になる。ここで分析力と並べて論理的思考力という言葉を持ち出したのには訳がある。
分析力とは冒頭から述べてきたように“分ける力”である。十全な論理的思考力を身に付けるためには“分ける力”と並んで“まとめる力”が必要である。両方が揃ってこそ初めて十全に対象を把握することができるのである。MECE に分ける練習だけでは、まとめる力=総合的把握力や体系的整合性を感じ取るセンシティビティは養成されない。適切なクライテリアの設定、MECEな分類、抽象的位相の上下への展開、および体系的整合(すべての枝分かれとくくり方が調和的に閉じていること)のすべての要素が含まれている体系化は、分析力と論理的思考力を強化するために最も有効な訓練になる。
どのクライテリアを選択すべきかという判断、
および選んだクライテリアによって
対象を完全に分け尽くしていく、
という知的苦闘が論理的センスを磨き
分析能力の筋トレになる。
1957 年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。82 年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。88 年コンサルティング会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける。また、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。著書に『成熟日本への進路』『プロフェッショナル原論』(いずれもちくま新書)、『リーダーシップ構造論』『戦略策定概論』『組織設計概論』(いずれも産能大学出版部)、『日本人の精神と資本主義の倫理』(茂木健一郎氏との共著、幻冬舎新書)、『プロフェッショナルコンサルティング』(冨山和彦氏との共著、東洋経済新報社)などがある。