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アジアビジネスを牽引するリーダーを育成せよ

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
グローバル市場での存在感が高まるアジア。そんなアジアでのリーダーはアジアから育てようという画期的なプログラムがある。日中韓3ヵ国の学生が産業、経済、文化について意見を戦わせ、同じ釜の飯を食う。アジア発のリーダーを生む授業「アジアビジネス・フィールドスタディ」とはどのような授業なのか。

アジア発のビジネスをアジアから

中国(China)、韓国(Korea)、日本(Japan)の頭文字をとった「CKJプロジェクト」とは、授業の通称だ。これは、日本の「慶應義塾大学大学院経営管理研究科(以下、KBS)」と中国の「清華大学」、韓国の「KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)」という、各国においてトップレベルのビジネススクールが提携するプロジェクトだ。ここではアジアビジネスをテーマに、共同研究やセミナーなどが実施されている。その一環として行われているのが、「アジアビジネス・フィールドスタディ」である。

このプロジェクトでは、「アジアマーケットを牽引するリーダーをアジアから輩出する」ことを大きな目標に掲げている。3ヵ国のうち1国(以下、ホスト国)の特徴のある産業にテーマを絞り、日中韓の各大学院生が、実際に現地の企業を分析、訪問し、研究をするのだ。 ここでは2012年に日本で行われた第1回の様子を紹介しながら、どのような成果があったのか見ていきたい。プロジェクトを通じ、浮き彫りになった日本のビジネスの課題とは?

ディスカッションで浮き彫りになった3国間の違い

第1回目のテーマは日本の食文化に関するビジネスについて。ホスト校となるKBSの学生は、事前に日本の食文化ビジネスを分析し、訪問予定企業をリサーチ。その成果をビデオカンファレンスで中国、韓国の学生と情報を共有しつつ、事前準備を進めたという。実際に企業を訪問するフィールドスタディは7月上旬に7泊8日にわたって実施された。

訪れたのは、醤油メーカーの「キッコーマン」、醸造機器・プラントを製造する「フジワラテクノアート」、京懐石料理店「美濃吉」、日本酒メーカーの「月桂冠」、牛丼チェーンを展開する「吉野家」といった5つの企業と農林水産省。各訪問先の工場などを現地調査し、企業トップへのインタビューなどに臨んだ。各国2人ずつ6人のグループごとに一つの企業を担当し、各国12名、総勢36名の学生が、これらの企業の成長機会とその課題について分析し、各企業へ提言を行った。これらの結果は、三国が共有する企業ケースとしてデータベース化されている。

授業のコーディネーターである小幡績准教授はこの時の様子を「3ヵ国の学生が集まると、ディスカッションや企業への提言時などに各国の特徴が顕著に現れます。議論のなかで、改めて日本の良さや弱さなどが見えて来ました」と語る。

相手を尊重する日本と考えを主張する中国・韓国

小幡准教授は「韓国のKAISTの学生は非常に優秀で、分析力も議論の力もダントツに高い。日本の学生は、そのような切れ味では韓国の学生たちにかないませんでしたが、企業の個々の状況を丁寧に捉えて、現実的で現場目線の議論、提案が多かったと思います。中国の清華大学の学生は常にトップの視点でした。訪問した日本企業の経営者に対して、質問よりもとにかく提言をしまくる。中国ではこうやるべきだ、という戦略的な提案をとことんしていました。日本の学生は、トップに聞くときも、実際の現場はどうなっているか、実際にどのように日常的な問題があるのか、という質問が多く、目線の違いが際立っていました。そして、やはり、日本はすごい。日本には有名でない面白い企業が日本各地にある。日本は奥深いと三国の学生は鮮烈な印象を持ったでしょうし、また、日本の学生のおもてなし能力の高さに、韓国、中国の学生は驚き、みな日本の大ファンになりました」。

日本ボトム、米国トップ、韓国はマーケティング

小幡准教授は今年のテーマであるエンターテインメントビジネスに関しては、三国の違いをこう話す。「日本の歌手、ポップスターですね、日本人にとってはアイドルを含めて面白いタレント(人材)がたくさんいる。でも、なかなか世界には通じない。よさが伝わらない。日本のよさを世界に伝えるにはどうしたらいいだろう。韓国、中国のスターはどうだろう。これが今年のテーマであって、昨年の食文化に続いて、カルチャーを世界に伝え、それをビジネスで発展させる、というテーマを連続して追いかけます」。

「日本のボトムアップアプローチに対して、米国はトップダウンアプローチ。韓国はマーケティングアプローチです。米国は、米国のスターは当然世界のスターという前提で、当然お前らも好きだろう、と来ます。これはこれで効果的。世界の若者が米国に憧れがあれば、非常に効率的に世界中で売れます。一方、韓国は、米国ではどういうスターが受けるのか、日本では?中国では?と徹底的に分析して、日本用アイドルには日本語を、米国用には英語を特訓させ、小学生のころからニューヨークに住まわせます。日本は、まったく逆。草の根アイドルとでも言いますか、ファンが、自分たちの身近にいそうな、隣のクラスのかわいい子をスターに育てる悦びを味わうのがファン。だから、日本のアイドルは個性があって面白いのですが、世界では理解しにくい。ここをどうするかが課題です。今年は、韓国のエンタメ企業を訪問し、こういったトピックで3ヵ国の学生は議論を戦わせることになるでしょう」。

実践力を養い人脈をアジアに広げる場

第1回目の「アジアビジネス・フィールドスタディ」で、学生たちは、グローバル市場における日本を理解し、深く考えることとなった。また、学生同士、韓国や中国の学生とその後もずっと交流が続いているという。これはまさに「実践力を養うこと」や「人と人とのつながり」を重視するKBSの教育理念のすべてが凝縮された実りの多いものとなった。

第1回目の成功は非常に注目を集め、KBSでは第2回の応募時、12人の定員に対し、倍以上の応募があったという。第2回のホスト国は韓国。エンターテインメントをテーマに今年はどのような議論が深まるのだろうか。

「これからも毎年ずっと続けて行きますよ。学校の中では評判になっていますが、この結果を企業にうまくフィードバックできるようになってくるとその意義も増していきます。アジアマーケットは非常に大きいので、訪問企業が本プログラムに対して、期待してくれるようになれば、さらによい循環が生まれるでしょう」と、小幡准教授も今後の展開に期待を寄せる。

交流を通じて、様々な気付きや価値を与えてくれる「アジアビジネス・フィールドスタディ」。その参加者から、アジアビジネスを牽引するリーダーが生まれるのは、それほど遠くない未来なのかもしれない。