
意思決定能力を養う「慶應型ケースメソッド」
ビジネスリーダー教育の手法として、最近よく耳にする「ケースメソッド」。
これは、今から80年以上前に、ハーバード大学ビジネススクールを中心に開発されたもので、実際の経営状況をまとめたケースを素材にディスカッションを行う教育方法。日本では、約50年前にKBSによって、初めて導入。以来、慶應義塾建学の精神である実学主義に基づき、KBSでは日本のビジネス環境に合わせて「慶應型ケースメソッド」として独自に発展させてきた。
ケースメソッドは、現実の企業経営の実態を元に独自に開発したケース(教材)を使って授業が進められる。ケースは、これまで蓄積してきた3,500余りという膨大なオリジナルケースの他、教授陣が最先端の経営学研究の成果を背景に新たに作成するものも。これら多種多様なケースを活用し、より実践的で時代に即した授業展開に定評がある。
学生は、与えられたケースを元に「事前の個人研究」「グループディスカッション」「クラスディスカッション」という学習プロセスに主体的に参加。そして、一般的な知識や一方的な理論の講義からは得られない、実践的な経営意思決定能力、判断力、行動力が養われるのだ。実際のMBA課程では、500〜700のケースに取り組むこととなる。ケースメソッドを数多く繰り返すことで、実践的な経営意思決定能力が醸成されるという。
ビジネスリーダーに求められる
“縦と横のリーダーシップ”

世界規模でビジネス環境の変化は激しさを増し、経営課題はますます高度化、複雑化する一方である。
このような状況の下、ビジネスリーダーには2つのリーダーシップが求められる。それは、組織の上方から下方へ向かう“縦のリーダーシップ”と、理念を共有して、人の連携を構築する“横のリーダーシップ”。そして、KBSのケースメソッドは、その両方を育む可能性を秘めている。
“縦のリーダーシップ”という点では、トップの視点から経営課題に対する革新的な意思決定を提示し、常に変化する経営環境への対応力を身につける訓練になる。同時に、他者の発言を尊重しながら議論を行うことで“横のリーダーシップ”も養えるのだ。
トップ人財に求められる素養とは?
2年間をかけて行われるKBSの修士課程(MBAプログラム)のカリキュラムは、必修の「基礎科目」と年間60以上の多種多様な科目の中から選択履修する「専門科目・自由科目」に分かれている。
1年次に経営管理における主要8領域について学ぶ「基礎科目」では、1学年100名を2クラス、10グループに分け、週5日、朝9時から16時15分まで授業を行う。1ケースあたり、個人研究に3時間、グループディスカッションとクラスディスカッションに3時間を要し、この8科目だけで総学習時間は1,200時間にも及ぶ。この理不尽なまでの圧倒的な学習時間こそKBSならではの魅力だ。
各科目は中間試験・期末試験および授業貢献度(発言点)で評価され成績がつく。8科目の平均点が低いと進級が困難になり退学処分になることも。逃げることは許されない。知識を学ぶだけではない、連日のケースメソッドという修羅場体験から得るものは大きいようだ。
ここまで基礎科目に徹底的にこだわるのは、「トップ人財は経営全分野の素養をもたなければいけない」という考えの表れ。また、「スペシャリストや部門管理者であっても、他分野・他部門の仕事の理解は欠かせない」という考えも。
厳しいカリキュラムだからこそ、優れたトップ人財を育てることができる——。それは、50年の歴史と実績が証明するところである。
ビジネス・ゲーム合宿で理論と革新的な意思決定を実践

1年次の基礎科目と専門科目の多くをケースメソッドで学んだ後、毎年12月に合宿で行われる「ビジネス・ゲーム」。このプログラムは、1年間学んできた数多くの理論やノウハウをリアルな経営体験を通じて実感し、体得するのが狙い。
合宿に当たっては、数チームに分かれ、日本の鉄鋼業をモデルに仮想の会社を設立。事前に、戦略パターンや財務シミュレーション、競争対応シナリオについて検討し、合宿に臨む。そして、2泊3日の合宿中はチーム間で昼夜を問わず激しい競争を展開する。
刻々と変化する経営環境の中で、総合的な経営判断を行い、その実行力が試されるのだ。結果、参加者は経営の各分野間の協調の重要性とマネジメントの役割について学ぶ。
世界を肌で感じる留学体験
KBSは、海外のトップビジネススクール36校と独自に交換協定を締結している。基礎科目の成績とTOEFLの点数が一定基準をクリアすれば、2年次2学期に留学することが可能だ。留学先の授業では、苦労をしながらも海外の優秀な学生達と臆すること無く議論ができる自分の姿に驚くという。1年間の成長を実感し、改めて自分自身を見つめなおす絶好の機会のようだ。更に多くの時間留学したい学生のためには、2年次の1年間を海外のビジネススクールで過ごすダブルディグリープログラムも用意されている。
また、留学をしなくても、本プログラムの交換留学生と共に英語のみで実施される授業を履修することもできる。
日本で唯一2つの国際的認証機関「AACSB」「EFMD EQUIS」の認証を得ているKBS。日本にいながら世界標準の授業を履修し、留学体験もできるのだ。
T型人財の育成
KBSのカリキュラムは、1年次の基礎科目で分野横断的に徹底的に学ぶ。これがTの字の横棒。そして、2年次にはゼミナールに所属し、指導教員の指導のもと専門科目を履修しながら研究を行い専門領域を深く掘り下げる。これがTの字の縦棒。ゼミナールにおいて学生はフィールドワークや各種調査を行い、最終的に修士論文としてまとめる。1月末の修士論文発表会では、教員・学生の前で全員がプレゼンテーションを行い審査を受ける。
こうして、ジェネラリスト(横棒)とスペシャリスト(縦棒)の素養をバランスよく吸収し、構想力、論理的思考力を養うと共に、学生同士の強固なネットワークも築いていくのである。
トップリーダーを輩出し続ける最大の秘密とは?

高度なカリキュラムや教育理念によって、KBSが数多くのビジネスリーダーを輩出していることは間違いないだろう。しかし、高い実績を誇る秘密として、さらに付け加えるならば、KBSが「人と人のつながりを重視している」という点を挙げておきたい。
KBSで教鞭を執る小幡績准教授は「ビジネススクールはビジネススキルやツールだけを学ぶ場ではない。損得勘定抜きで、ビジネス、公私共に付き合える一生の友を作る場所でもあるが、KBSなら、それができる」という。
社会で活躍するビジネスパーソンが入学することが多いビジネススクールにおいて、勤めながら通学することが許されない全日制・2年間のハードルは確かに高い。さらに、ケースメソッドの授業では、多くの時間を費やす事前準備が必須なため、学習はかなりハードなものとなるのは前述の通り。
しかし、そこにこだわるのは、多様な素養を身に付けるためには、ある程度の時間が必要だということはもちろん、人と人とのつながりにも重きをおいているということが考えられる。
長きに渡って、苦楽を共にしてきた者たちが、理屈を超えた固い絆で結ばれ、そしてその関係が実際のビジネスに好影響を及ぼすことは、想像に難くない。

