キャリアの選択肢としての「起業」 まずはイントレプレナーを経験しよう
私の起業体験
読者の皆さんは「起業」に対してどのようなイメージを抱いているだろうか。キャリアという文脈で考えれば「転職」よりも大掛かりで、リスクも大きなイベントである。今は多くのビジネスパーソンが「転職」を自分事として考えられるが、「起業」について同じように考えられる人はまだまだ少数だ。
だが「起業」経験は、キャリアにおいて、とてつもなく大きな財産をもたらす。それは、起業が順調にいっても、残念ながらうまくいかなくても、漏れなく得られるものだ。しかも、起業のハードルやリスクは、年々下がる一方である。だから私は読者の皆さんに、自分のキャリアを考える上で、「起業」という選択肢を持っていただきたいと考えている。
私のキャリアのスタートは「学生起業」であった。インターネットに大きな可能性を感じていた私は、何か商売ができるのではないかとパソコンでホームページの作り方を覚え、名刺を刷り、アポイントを取って見よう見まねで営業した。そして自宅でホームページ作成の仕事をスタート。4年生のときに登記して社長になった。当時、学生の起業は珍しく、メディアに頻繁に取り上げられた。米国ではドットコムバブル、日本ではビットバレーブームが起こり、ベンチャーが市民権を得始めていた。みんなが目標としていたのが上場である。自分も外から資金を入れ、コンサルタントを雇って上場をめざした。
ところが米国でドットコムバブルがはじけ、日本でも資金調達がままならなくなった。社員50人ほどの会社に成長していたが、2002年に営業権を他社に譲渡し、50%以上持っていた株を放棄して株主に返還した。8年にわたって経営した会社を閉じ、身一つになった。こうして私の起業はいったん幕を下ろすことになった。