キャリアの選択肢としての「起業」 まずはイントレプレナーを経験しよう
まずはイントレプレナーを経験しよう
今すぐ実際に起業しなくても構わない。まずは、今やっている会社の仕事を「事業」と捉え、自分が事業主であることを意識するだけでもいい。自分がオーナーとして責任を持ち、楽しみながら事業を育てていく。当然、自分自身も磨かないといけない。それにオーナー意識、当事者意識を持つと、人にやらされているときとはパフォーマンスがまったく変わってくる。
また、起業と同じような経験を、仕事以外のことから積むこともできる。サークルを運営する。講師を招いて講演会を開く。みんなで旅行に行く。勉強会を計画する。このように、人がかかわり、お金が発生するプロジェクトを立ち上げてみるといい。
サンディエゴのソニーにいたとき、私は東日本大震災の被災地を支援するためのチャリティコンサートを開いた。テレビで被災地の映像を見て、居ても立ってもいられず、会社の日本人に声をかけて、Facebookでプロジェクトを立ち上げたのだ。PRのプロ、映像のプロ、デザイナーなど50人のボランティアスタッフが集まってくれた。デザイナーがロゴを作り、秘書が役員に話をつけ、普段は目立たない総務のおじさんが大活躍するなど、それぞれが得意分野を生かして準備にあたってくれた。社外でも、地元のテレビ局の有名なキャスターが司会をしてくれたり、Ustreamもオフィシャルに中継をサポートしてくれたりした。当日は800人が会場に集まり、Ustreamで1000人がコンサートを楽しんだ。結果として、2時間で5万ドル以上の義援金を集めることができたのだ。
こうしたプロジェクトを経験することで、起業と似たような経験をすることができる。全体像を考え、スタッフを集め、お金や時間、人員の制約と戦いながら、プロジェクトで最大の効果を生み出す。自分のリーダーシップを試すことも、人と協調して物事を進める経験も積める。実際にやってみると、反省も学びもあり、いろいろなことが得られるだろう。実際の起業とは異なるが、「擬似起業」として、少ないリスクで同様の経験を得ることができるのだ。