キャリアの選択肢としての「起業」 まずはイントレプレナーを経験しよう
起業で得られるスキルと経験
ソニーでも楽天でも、起業の経験は非常に役に立った。
まず起業をすると、すべての仕事を自分でやらなくてはならないので、短期間にビジネスの経験値が上がる。また全方位的な体験をすることになるので、どんな問題に直面しても、ある程度の解決策の見当がつく。さらに、人任せにしないで自分で判断する習慣も人一倍身につく。失敗を重ねて痛い思いをすることによって、取るべきリスク、取ってはいけないリスクを見極める力が磨かれるのも起業で得られることの1つだ。
起業によって得られる「仕事に対する価値観」も重要だ。会社を経営すると、自分が今日した仕事がどのくらい業績に響いてくるかを意識せざるをえない。だから会社員になっても、自分がどれだけ会社に貢献しているのか、それに対してどう評価されているのか、常にバランス感覚を持って仕事ができる。
限界の設定、つまり「あきらめる」「あきらめない」の判断も、起業の経験があるとなしとでは異なってくるだろう。会社員で成功体験の少ない人は、何事もすぐにあきらめてしまいがちだ。なぜなら無理をしても給料は変わらないからだ。しかし起業家は、あきらめれば会社を傾かせてしまうおそれもあり、簡単にあきらめることはできない。だから、どうしたらもっとうまくできるかを考え続ける習慣ができる。
そしてこれらは言うまでもなく、起業家だけでなく、企業で働く一ビジネスパーソンにとっても重要なことである。自分は起業家であった時期があったから、これらのことが身につき、今があるのだが、大企業に長く勤めていても、同じ体験はできないだろう。私がキャリアの選択肢として起業をすすめるのには、こういった理由があるのだ。