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政治・経済・投資 #未知の採掘 深海レアアースへの期待と懸念

太平洋を大国の「チェス盤」にしてはならない…国際ルール未整備で進む深海採掘に、「世界初」を背負う日本に迫られる選択

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メタルズカンパニー創業者
海底採掘に前のめりなことで知られているメタルズ・カンパニー。環境団体は懸念を示している(写真:Carolyn Cole/Los Angeles Times via Getty Images)

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光の届かない深海には貴重な生態系が広がる一方、EVやスマホに不可欠なレアアースなどの重要鉱物が眠る。日本は2026年2月、脱中国依存の切り札として南鳥島沖の水深6000メートルから世界初の「レアアース泥」連続引き揚げに成功し、国内は沸き立った。

しかし国際社会では、生態系への未解明なリスクを懸念し、深海採掘に「待った」をかけるモラトリアムの動きが急拡大している。ノジュール採掘すら慎重論が強まる中、日本はさらに前例のないレアアース泥の採掘へ突き進む。

海洋秩序を左右する立場にある日本はどう動くべきか。本特集では世界の慎重な潮流と逆行する日本の現状を追う。第4回となる今回は、深海採掘の国際ルールがなおも未整備な中でも進む世界の動きや「世界初」の取り組みを進める日本はどうすべきか考えていく。

「一向に進展ない」ように見える国際総会

深海採掘に関する国際ルールは、いまだ完成していないだけでなく、いつ完成するのかも見通せない。ただ、世界の海の底では、すでに商業ベースの資源採掘に向けた動きが着々と進む。深海をめぐる競争は今、公海とEEZの両方で「ルールづくり」を置き去りにして加速している。

公海の海底で採掘をしたい企業や国に対して許可証を発行したり、ルールを作ったりする役割を担っているのが国際海底機構(ISA)だ。国連の傘下にある国際機関で、約170カ国が加盟している。だがその意思決定は、しばしば行き詰まりをみせる。

2026年7月、ジャマイカに85カ国の代表が集まった。深海採掘の是非を左右する国際ルール「マイニングコード」をいよいよ採択できるタイミングだった。しかし、実際の会議は、環境基準も、利益の分け方も、合意に至らないまま幕を閉じた。交渉はもう何年も同じように膠着している。

かつては総会の定足数(加盟国の過半数)すら満たせないことがあり、近年は出席国が増えたものの、今度は一部の推進国が議論の進行そのものを阻む場面が続いている。23年の総会では、中国などがモラトリアムをめぐる議論をブロック。合意形成は事実上、ごく一部の国の抵抗で止まりうる構造になっている。

もっとも、ISAが機能不全に陥っているのではないかという見方には異論もある。海洋ガバナンスを専門とするポルトガルのオセアノ・アズール財団のプラディープ・シン氏は、10年近くISAの交渉を間近で見てきた。彼は交渉が膠着しているのではなく「時間をかけて着実に進んでいる」と見る。

「ISAが遅い、各国が足踏みしている、という物語を、自分たちの目的のために意図的に、誤って広めるアクターがいる。しかし、現実は違う。交渉プロセスは複雑で、扱う主題はきわめて深刻だ。だから時間がかかるのであり、各国は誠実に参加している」(シン氏)

自国の海をめぐる「採掘ルール未整備」の意味

どの国にも属さない公海は、国連海洋法条約(UNCLOS)のもとで「人類共通の財産」と位置づけられている。そのため、公海の海底開発について各国はISAから許可を得てライセンスを取得する必要がある。現在のモラトリアム議論は、主にこの公海での採掘を想定したものだ。

一方、自国の排他的経済水域(EEZ)内で行う採掘は各国の主権的権利で進められ、ISAの許可を必要としない。ただし、EEZ内だからといって、まったくの無制約というわけではない。UNCLOSは加盟国の海洋環境保護・保全を義務づけている(第192条)。シン氏は、次のように指摘する。

「沿岸国は自国の管轄内で資源を探査・開発する主権的権利を持つ。しかし、それは責任なく好き勝手にやっていいという意味ではない。重大な被害、とりわけ越境的な被害を引き起こさないこと、環境影響評価や監視の仕組みを整えること、強い順守と執行の措置を講じることが求められる。国内法や環境政策が整備されること、そして活動がそれらの要件を満たす必要がある」(シン氏)

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