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政治・経済・投資 #未知の採掘 深海レアアースへの期待と懸念

太平洋を大国の「チェス盤」にしてはならない…国際ルール未整備で進む深海採掘に、「世界初」を背負う日本に迫られる選択

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メタルズカンパニー創業者
海底採掘に前のめりなことで知られているメタルズ・カンパニー。環境団体は懸念を示している(写真:Carolyn Cole/Los Angeles Times via Getty Images)
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しかもこの国内法の抜け穴は、「国内で取り締まれない」程度にとどまらない。国際法のレベルでも、日本の責任が問われうるとシン氏は警告する。ISAを迂回して得られた鉱物を締約国が製錬・輸入するなどして支援すれば、国家責任の問題が生じるからだ。

「UNCLOSに署名することで、各国はISAが深海底の鉱物資源を統治する排他的な権限を持つことに同意したことになる。それを迂回する活動に参加・支援すれば、国家責任の問題が生じる。国際法上、とりわけ第137条と第139条のもとで、この義務は積極的な行為だけでなく、適時に行動を取らず、事態を防がないといった不作為にも適用される」(シン氏)

つまり日本がISA枠外で得られた鉱物の製錬を取り締まらないこと自体が、国際法上の責任を問われる火種になる。

史上「前例のない」レアアース泥の場合はどうなるのか

本特集がこれまでに追ってきたレアアース泥の場合、ルールづくりはどうなっていくのか。

マンガン団塊とは事情が異なるレアアースの製錬は、本特集第3回で見たように日本国内ではできず、公海で他国が競って採っているわけでもない。レアアース泥の開発は事実上、南鳥島という日本のEEZの中で日本だけが独自に扱っているプロジェクトだ。

内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の石井正一プログラムディレクターも「レアアース泥は団塊の採掘とは性質が異なり、まだ世界のどの国も本格的な調査や採掘をしておらず、ISAでもルールの議論が進んでいない」ことを強調する。

ただ、この「前例がない」という事実は両義的になりうる。日本が世界初のノウハウを握り、ルールづくりを主導しうる根拠になる一方で、裏を返せばレアアース泥を律する国際的な枠組みが、そもそも公海にもEEZにも存在しないということでもある。

「前例がない」ことは、それを国際的な議論の例外として扱う理由にはならない。日本が進める深海採掘や、南鳥島をめぐる核廃棄物・軍事利用の動きに、早くから警鐘を鳴らしてきたグアム議会のウィリアム・パーキンソン上院議員は太平洋コミュニティの視点から「世界初だから特別扱いを」ではなく「世界初だからこそ、より開かれた、より厳しい議論を」と求める。

「独立したベースライン調査、環境データの透明な公開、累積的影響の評価、継続的なモニタリング、強制力のある中止基準、信頼できる事故・復旧計画、そして太平洋の科学者や共同体の参加が広く必要だ」(パーキンソン上院議員)

研究開発の成果をもとに、まだ現実性やリスクが不透明のまま商業ベースの採掘へと急ぐことは、これからのレアアース採掘を左右する問題となる。だからこそ石井氏は「深海環境への負荷を抑えることこそ技術開発の中心的な目標」だと語り、モニタリング手法を今後も深めていく必要性を強調する。

日本は今後、レアアース泥採掘の技術やモニタリング手法を、国際的に広めることを視野に入れている。つまり日本1国にとどまらず、やがて他国へ移転され、輸出されうるスタンダードを作っているということだ。レアアース泥採掘の影響も、それを律するルールも、ここで最初に築く基準がそのまま世界の先例となり、標準になっていく。

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