・人気ドラマ『VIVANT』では中国を実名で敵役に設定
・背景には国民の対中不信と政府の安保認識の変化がある
・空気でなくリアリズムで日中関係の打開を図るべきだ
「怪物とたたかう者は、そのとき自分が怪物にならないよう用心するがいい。長いあいだ奈落をのぞいていると、奈落のほうもお前をのぞき込む」(ニーチェ『善悪の彼岸』、丘沢静也訳、講談社学術文庫)。他者との対立が深まると、自分のやることも敵に似てくるのが人の性(さが)だ。
TBS系ドラマ『VIVANT』は陸上自衛隊の非公然情報機関(とされる)「別班(べっぱん)」が世界を股にかけて活躍するスパイサスペンスで、熱狂的なファンがついている。現在放映中のシーズン2は初回の世帯視聴率が18.8%で今年のテレビドラマでは最高。10週連続で15%以上をキープしている(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。
気になるのは劇中に登場する敵の描き方だ。中国側の組織が拉致した別班メンバーに非道な拷問を加えるシーンがこれでもかと繰り返される。そのどぎつさは、海外の配信ドラマ並みだ。
日本の地上波ドラマで実在する国を敵役と明示した例は珍しい。『VIVANT』と同じく諜報の世界を舞台にしたNHK制作の『外事警察』(2009年)でも、特定の国は名指しされなかった。
シーズン1で対峙したのは架空の組織
ここで思い出すべきなのが、23年放映のシーズン1で別班が対峙した「テント」が架空のテロ組織だったことである。世界情勢を強く想起させながらも、現実の国家とは一定の距離を置いていた。それから3年。なぜ『VIVANT』は中国を実名で物語に登場させるようになったのか。
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