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深海採掘が放射性物質を放出する懸念、レアアースは?
深海には放射性物質が自然に濃縮されている。それが採掘によって海水に溶け出したり堆積物と一緒に巻き上がったりすることで、食物連鎖に入り込む生物濃縮のリスクが残る。
2026年7月、オーストラリア・パプアニューギニア・カナダのNGO・科学者連合「Deep Sea Mining Campaign(ディープ・シー・マイニング・キャンペーン)」は「深海採掘が放射性物質を海の中にばらまく可能性があるのに、その影響を調べた研究がゼロだ」という報告書を発表した。
また特に問題となるのは、重金属(銅、コバルト、ニッケルなど)と放射性物質が採掘時に同時に放出される点だ。単独でも有害なものが組み合わさったときの影響に関する研究が、今のところ世界的に追いついていない。
この報告書が主に対象としたのは、マンガン団塊の採掘だ。一方、日本が深海からの開発を進めるレアアース泥は、開発時の環境汚染源となるトリウムやウランといった放射性元素の濃度が低い点で陸上の鉱山に比べて「環境に優しい」と語られてきた。ただ深海の堆積物には程度の差こそあれ、トリウムやウランが自然に含まれているものだ。
「レアアース泥は放射性元素が少ない」をどう見たらいい?
ISA(国際海底機構)の国際会議にオブザーバーとして参加したアジア太平洋資料センターの田中滋氏は、レアアース泥採掘にかかる放射性物質放出の懸念をこう言語化する。
「深海採掘では『これを目当てに取る』と言っている金属と同じだけ、放射性トリウムが入っている。これをどう見たら良いのか」(田中氏)
加藤泰浩教授のグループが16年に学術誌『Geochemical Journal』に発表した論文では、南鳥島周辺の海底から採った泥を深さごとに分析し一覧にしてある。その565ページを見ると、確かにレアアースが最も濃集する層では狙いの金属であるテルビウム(約34.8ppm)と、放射性のトリウム(約42.4ppm)が、ほぼ同じ濃度で同じ層に含まれている。トリウムはレアアースと同じ地質プロセスで濃集するため、両者を切り離すことはできない。
これに対し内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」のもと段階的な研究調査を進めるJAMSTEC(海洋研究開発機構)は「論文の数値の幅からピーク値のみを取り出して平均値と比較するのは適切でない」とし、「レアアースやトリウムが濃集した層もあれば、濃度の低い層もある中で、ひとつの濃集層だけを取り出すことはできず、濃度の低い層も一緒に採ることになる。そのため泥全体のトリウム濃度は平均すると約15ppm程度(海洋堆積物のバックグラウンド)の範囲に収まる」と説明する。
またプロジェクトを統括する内閣府SIPの石井正一プログラムディレクターは取材に対し、レアアース泥に含まれる物質は陸上の鉱石とは性状が異なり「特別な管理基準を要しない、自然界と同等の水準」にあるものだと説明する。
「陸上レアアース鉱石に含まれるような放射性物質、あるいは有害物質、カドミウムやヒ素など。 そういうものが、ほとんど自然環境と同等で特別な管理基準を必要とするようなレベルではない」(石井氏)
同年2月に南鳥島沖で行った採鉱システムの接続試験の結果を26年7月24日に公表した際には、回収した泥に含まれる中重希土類は狙い通りの高品位だった一方で、「有害物質および放射性物質については、有意な数値は検出されなかった」とある。


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