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政治・経済・投資 #未知の採掘 深海レアアースへの期待と懸念

技術開発が着実に進む南鳥島沖のレアアース採掘で、早期商業化では壁になる精錬の脱中国依存…課題となる構造とは?

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土壌汚染が広がった中国のレアアース精製施設と周囲(写真:The New York Times)
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また博士は、日本が福島の事故以降、放射性物質に関する規制をアメリカやオーストラリアより厳しくしてきたことに注目する。悲惨な経験から規制を厳しくするのは当然のこととしつつ、それゆえに日本では放射性廃棄物を国内で処理する方法が容易には存在せず、商業化に際して大きな壁として立ちはだかる可能性を指摘する。

これらの懸念に対して石井氏は、製錬の濃縮工程を経ても規制上の管理が必要な水準には達せず、生じる廃棄物も一般産業廃棄物として処分できるレベルにとどまると説明する。

「我々(SIPプログラム)は今、試験室ベースでやっているが、濃縮プロセスにおいても放射線は管理を必要とするレベルにはならず、一般産業廃棄物として処分できるレベルであることを確認している。 これは国立環境研究所とともに作業をしているので、決して内閣府SIPだけで確認しているわけではない」(石井氏)

商業ベースの規模で大量の泥を処理したときに同じ結果になるのかは、これから検証される段階にある。

研究は進むも、宙に浮く製錬計画

研究開発を進めることと、商業化が決まっていることは、同じではない。石井氏は、国の支援のもとで供給網への貢献を目指す「産業化」と、民間企業が利益を得て自立的に事業を回す「商業化」とを区別する。SIPが今目指しているのは前者の確立だ。27年2月の試験では採鉱量の増加、約2000km離れた海域での長期操業、効率化といった残されている課題を乗り越えて一定の規模で採鉱・揚泥する技術を確立することを狙うが、これは必ずしも数年以内の商業化を目指すものではない。

採鉱システムの試験や環境モニタリング技術の開発を目的としたSIPプロジェクトの責任者である山本啓之氏自身、「SIPがやっているのは研究開発で、商業化はまったく別のフェーズ」だと語っている。

一方で、民間企業を集め、採算や現実性に乏しいという指摘がある中でも商業化に前のめりな姿勢を見せるのが東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム(現「レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」)だ。

同コンソーシアムの関係者は取材に対し、製錬は「もちろん国内だ。プロテリアル、信越化学、三井金属の3社がレアアースの製錬をやっていて、そういうところと共同してやることになるだろう」と語った。この点について名指しされた3社に事実確認を求めた。

三井金属は「放射性元素を含む原料は受け入れておりません」とし、レアアースの製錬に関しては「現在計画がありません」と回答。プロテリアルも「株式会社三徳を含むプロテリアルグループにおいて、南鳥島レアアース泥の製錬に関する具体的な検討は行っておりません」と答えた。

信越化学は福井県に新たな製錬工場を建設する計画を進めているが、南鳥島のレアアース泥を扱うのかどうかについては「弊社のレアアース事業に関しては、『福井県に製錬工場を建設予定』以外、お答えできません」と回答した。取材時点で3社のいずれからも具体的な製錬計画は確認できなかった。 

また放射性物質を所管する原子力規制庁に問い合わせると、深海由来のレアアース泥は法の「指定原材料」に含まれないため「廃棄物が生じたとしても事業者の自主管理に委ねられる」という回答だった。そして「南鳥島のプロジェクトについて、事業者や他省庁から相談を受けたことはあるか」との質問には「ありません」と答えた。

「誰もやりたくない製錬」を引き受けることで、中国が独り勝ちしてきた現実

経産省「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」(24年3月)は、南鳥島レアアース泥の開発目的について自国周辺海域の資源を「国際情勢や地政学リスクに左右されず、自給率向上に資する」ためと、安全保障・自立の文脈で書いている。また石井氏は取材に対し、必ずしも「脱中国」ではなく「特定国への依存を低減し調達源を多様化する選択肢の一つとすること」と位置付けた。

とはいえ、現実的に鉱物資源をめぐる文脈で日本が依存しており「地政学リスク」に翻弄されうるような「特定の国」は1つしかない。

IEA(国際エネルギー機関)によると、中国は24年時点で世界のレアアースの採掘生産量の61%、製錬・加工能力の91%を占めている。レアアースの生産量で世界第2位を誇るアメリカでさえ、24年時点ではレアアース鉱石の製錬では約8割を中国へ依存していた。

25年4月、中国の輸出規制と報復関税を受けアメリカは国内製錬強化へと舵を切った。国防総省の直接出資、約10億ドルの設備投資、アップルとの長期供給契約という国家的な動員体制が取られ、レアアースの採掘や精製を手がけるMPマテリアルズ社は25年に製錬生産を前年の約2倍、年間2600トンの量へ引き上げた。しかし、中国にすぐ追いつけるわけではない。

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