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深海採掘をめぐり、アジア太平洋は商業開発が競われる最もホットな場所になっている。世界では海洋環境への未知の影響をめぐり公海での採掘の一旦停止を求める「モラトリアム」がトレンドと化すが、日本や韓国、中国などの東アジアの国際海底機構(ISA)加盟国でモラトリアムに賛同する国はいまだ存在しない。
深海をめぐる競争は、もはや鉱物だけの争いではない。ルールが定まる前に資源と安全保障の両面で優位に立てるかという宇宙開発競争にも似た構造だ。日本も海底でレアアース泥が見つかった南鳥島沖で深海採掘へ前のめりになっているが、後述するように専門家は日本が突き動かされている理由が鉱物そのものよりも「その島を使っている」と示すことの政治的な価値なのではないかと分析する。
モラトリアムを支持しないのは南鳥島の“実効支配”アピールか
モラトリアムに賛同することは、調査の継続自体を妨げはしない。にも関わらず、日本政府は国際社会のプレッシャーに逆らい2030年までの商業化にアクセルを踏み続けている。アジア太平洋資料センター(PARC)代表の田中滋氏はこう分析する。
「30年までのモラトリアムは、本当は日本にとって痛くも痒くもないはずだ。研究者はみんな『30年(の商業化)なんて無理』と思っている。それでもモラトリアムを支持できないのは、南鳥島を『使っている』と見せ続けることに政治的な意味があるからだ」(田中氏)
かつて沖ノ鳥島をめぐり、中国は「経済活動を行っていないのだから、島ではなく岩だ」と主張した。国連海洋法条約では、「島」の周囲200海里(約370㎞)は保有国にとっての広大な排他的経済水域(EEZ)となる。一方で、「岩」はそうではない。今回、南鳥島で採掘という経済活動の実績を作ることは、日本の実効支配を国際社会に示す材料になるという分析だ。

「南鳥島に『経済的な有用性が存在する』とアピールする。そちらの方が、今の政府のモチベーションとしては実はあるのかなと。深海採掘の現状や経済性を考えたら、そう見えるくらいにあり得ない。」(田中氏)
南鳥島周辺で個別に進行する “3つの国家プロジェクト”
南鳥島周辺で計画されるのは、深海採掘だけではない。
防衛省は27年から、ミサイルの発射訓練を始めたい旨を南鳥島を管轄する小笠原村に伝えている。これまでアメリカで行っていたものを国内に移し、射程200〜300kmのミサイルをトラック型の車両から発射する訓練だ。
また小笠原村は26年3月、南鳥島を高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地とする「文献調査」(処分場選定の第1段階にあたる机上調査)を経済産業省から申し入れられた。村長は4月に容認し、5月に調査が始まった。
1つの島に「レアアース採掘」「放射性廃棄物の最終処分場の候補地文献調査」「ミサイル発射訓練」という、3つの国家プロジェクトが同時に集まる。


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