また単に中国の資源開発が問題なのであれば、本来は「日本も同じ地域にISA(国際海底機構)探査ライセンスを取る」、または「ISA理事国として中国の探査継続に異議を申し立てる」という2つの選択肢があるはずだと田中氏は指摘する。
「日本の領海のすぐ近くに中国がISAの探査ライセンスを持っているのは、確かです。ただあくまで、公海での探査ライセンスだ。中国が独占しているという話でもない。日本もISAから探査ライセンスを取ればいい話だ。また日本はISAの理事国として発言権を持っているので、理事会で中国の探査の継続を打ち切る方向を模索すればいい」(田中氏)
「国家安全保障問題化」すると解決が遠くなる、資源安全保障をめぐる諸課題
経済産業省が24年3月に定めた「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」は、鉱物資源の安定供給確保を「我が国が抱える大きな課題」とし、自国周辺海域の資源を活用すれば「国際情勢や地政学リスクに左右されず、我が国の自給率の向上に資する」と明記している。また南鳥島のレアアース開発を担う内閣府SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の第3期(2023年度〜)は、その事業名を「海洋安全保障プラットフォームの構築」としている。この資源開発プロジェクトにおける安全保障上の意義の大きさがわかる。
重要鉱物のサプライチェーンを研究する米デラウェア大学のトム・ヘイル博士は、資源に関して「国家安全保障化」して議論することの逆説的な矛盾を指摘する。
「資源を国家安全保障の問題にすればするほど、課題を解決する時間は失われていく。逆に外交的かつ国際的な、対立を和らげるような道を探れば、時間の幅が広がり、問題はずっと解決しやすくなる」(ヘイル博士)
南鳥島の実効支配という政治的な演出が、かえって日本の資源安全保障の面でマイナスに働きうるというリスクは、冷静な注視に値するだろう。
採算の見通しも立たないまま国費がやみくもに投じられていけば、「脱中国」や「資源安全保障」というかけ声で始まったはずのプロジェクトが、経済面でも、国家安全保障の文脈でも、自身の足元を掘り崩しかねない。
そしてもう1つ、「脱中国」ナラティブにはまだ議論されつくしていない落とし穴がある。海から泥を採ることに成功しても、そこからレアアースを取り出す「精錬」の段階で、このままだとふたたび中国に行き着くこと。またそれが、現時点で答えを出せない放射性廃棄物という問題を抱えていることーー。
次回はその「クリーンな国産資源」という物語の裏で未解決の、精錬の問題を掘る。
(次回へ続く)


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