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政治・経済・投資 #未知の採掘 深海レアアースへの期待と懸念

期待高まる深海レアアース採掘に立ちはだかる壁…開発"反対"ではない「モラトリアム」の世界潮流を日本は検討すべき?

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南鳥島のレアアース泥採掘で使われた調査船「ちきゅう」が母港の清水港を出発する(写真:JAMSTEC提供)

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光の届かない深海には貴重な生態系が広がる一方、EVやスマホに不可欠なレアアースなどの重要鉱物が眠る。日本は2026年2月、脱中国依存の切り札として南鳥島沖の水深6000メートルから世界初の「レアアース泥」連続引き揚げに成功し、国内は沸き立った。

しかし国際社会では、生態系への未解明なリスクを懸念し、深海採掘に「待った」をかけるモラトリアムの動きが急拡大している。ノジュール採掘すら慎重論が強まる中、日本はさらに前例のないレアアース泥の採掘へ突き進む。

海洋秩序を左右する立場にある日本はどう動くべきか。本特集では世界の慎重な潮流と逆行する日本の現状を追う。第1回は、世界が採掘停止を求める背景にある環境リスクと国際社会の知られざる動きに迫る。

国運懸ける「国産レアアース」に「待った」の声

輸入の約90%を中国に依存していた日本に対し、領土問題をめぐって中国がレアアース輸出を禁止した「レアアースショック」直後の2012年。南鳥島付近の排他的経済水域(EEZ)内でレアアースを含む泥の存在が発見され、深海が日本の希望となった。安全保障的観点から、発見者である東京大学の加藤泰浩教授は取材に対しこう語る。

「我々が見つけた資源を開発できれば、そういう(レアアースをめぐる)問題はなくなる。産業界では、本当にこれはホットイシューになっていると思う」(加藤教授)

水深5569mの海底からレアアース泥を連続して船上まで引き揚げることに成功した事例は、世界で初となる。内閣府が主導する大型研究プログラム「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の海洋課題「海洋安全保障プラットフォームの構築」の一環として実施される研究開発では、南鳥島レアアース泥の28年以降の産業化を視野に入れ、27年2月までに1日あたり350トンの実証試験を目指すとしている。

レアアース泥サンプル(JAMSTECにて筆者撮影)

しかし、国際社会では、商業採掘への「待った」の声が相次ぐ。EU(欧州連合)や太平洋島嶼国を含む46カ国が、深海採掘に対してモラトリアムや一時停止措置を求めている。フランスのマクロン大統領はモラトリアムを「国際的に不可欠」と呼びかけ、国際連合のグテーレス事務総長も「深海を『ワイルドウェスト』(秩序なき開拓地)にしてはならない」と警告した。

こうした要請は公海における深海鉱物資源開発の一時停止を求めるものだが、自国水域での開発でも一時停止措置を講じている国がある。ポルトガルは50年までのモラトリアム法を国内で成立させた。世界で初めて深海採掘商業化への承認を進めていたノルウェーでさえも「29年まで採掘計画を停止する」と発表した。

モラトリアムに賛同する国リスト(画像:深海保全連合〈DSCC〉の資料)

政府だけではない。グーグルやサムスングループ、ボルボ、BMWなどど77社以上の多国籍企業や金融機関が海底からの鉱物調達をしないと誓約している(法的義務は伴わない)。

ただ、これらは将来的な開発を完全に否定するわけではない。解明されきれていない状況を無理やり打破して商業化へ向かうのではなく「もう少し待とう」と呼びかける動きだ。

自然環境への影響は未知の領域

その背景にあるのは、深海採掘が地球環境に及ぼす甚大な影響だ。

まず採掘機が海底をかき乱すことで、土けむりのような堆積物の雲「プルーム」が広がる。また水中では音や光が地上より遠くまで伝わるため、採掘に伴う騒音や照明が、暗闇と静寂に適応してきた深海生物を攪乱する。解明が少しずつされつつある段階の深海生物や中間層の生態系が採掘活動から受ける長期的な影響は、未知の次元といえる。

また採鉱では通常、大量の泥を吸い上げ、船上で鉱物を選り分けたあと、不要な泥や水を再び海へ戻すが、これは海面にではなく水深数百〜千mほどの「中層水域」で放出される。金属が含まれた排水は、その深さで暮らす魚や生物の体内に取り込まれることになる。

マグロのように中層まで潜って餌をとる魚がそれを食べ、さらに人間がその魚を口にするという「生物濃縮」が起こるのだ。太平洋の深海で採掘が進めば、食卓に直結する問題になる。日本は世界のマグロのおよそ4分の1を消費し、とりわけ太平洋クロマグロについては、世界の漁獲・消費の約8割を占める、世界最大のマグロ消費国だからだ

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