同時にシン氏は、ISAの権威はこの挑戦に耐えうるとも見ている。
「こうした身勝手な行動の脅威は新しいものではない。80年代にもあった。その時、国際社会は結束し、ISAへの信頼を選んだ」(シン氏)
トランプ政権と組んで暴走する企業も... 日本企業も名指し
大統領令の直後に、カナダ系のメタルズ・カンパニー(TMC)は公海であるクラリオン・クリッパートン海域(CCZ)での採掘・探査をアメリカに申請した。
これまでTMCはナウルやトンガなど小さな島嶼国に設立した子会社を通じてISAの探査ライセンスを取得してきた。また自前の採掘船ではなくオランダ企業のパナマ籍の船を使用しているため、責任を回避できる構造になっている。しかし、UNCLOS第137条などは加盟国の非合法な採掘への加担を禁じているため、オランダとパナマは国家責任を問われうる。
そのTMCが「製錬パートナー」として名指ししてきたのが、日本の大平洋金属(PAMCO)だった。アメリカの株主向けに公表されたフィージビリティ調査(新規事業や計画の前に、本当に実行できるのかや、利益を調べること)の中で、同社の名前は繰り返し登場する。
ここで問われるのは内閣府が開発を進めるレアアース泥ではなく、ニッケルやコバルトを含む「マンガン団塊」だ。大平洋金属はもともとニッケルの製錬を手がける企業で、本特集第3回で見たようなレアアース泥をめぐる国内製錬の問題がなく、現時点で実際に国内で製錬しうる。
名指しされた大平洋金属はこれを否定。アジア太平洋資料センター(PARC)と国際環境NGOのFoE Japan(エフオーイー・ジャパン)の送った公開質問状に対し、同社は書面で「TMCとの商業規模の製錬に関する契約は存在せず、国際的に承認されたプロセスで得られた鉱物しか使わない」こと、また「承認が得られるまで設備投資はしない」と回答した。
他国の「抜け穴」にされないために必要な国内法整備
もし仮に、ISAを迂回することで得られた鉱物を日本企業が製錬したらどうなるのか。日本には深海底鉱業暫定措置法(82年)という法律があるが、ここには欠陥があるとPARCの事務局長である田中滋氏は指摘する。
「運用次第では、国際法に反する形で得られた深海底の鉱物を取り扱っても、国内では取り締まれない可能性がある」(田中氏)
同法の現行解釈では、海外企業が海外で、その国の法律上は合法な行為として得た鉱物を日本法人が輸入して製錬しても、この法律には抵触しないとされる。つまり、アメリカ法人を通じて日本で製錬し、日本国内に流通させる「抜け穴」が作られる可能性が生まれてしまう。だからこそUNCLOSに準拠した国内法を整備することが必要なのだと田中氏は強調する。


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