「開店してからは仕上げだけなので、少人数でも十分に店を回せるんですよ」
肉の仕込みには緻密な工夫を重ねる一方で、マロリーポークには思わずクスッと笑ってしまうような仕掛けもある。最も表れているのが店名「マロリー」だ。由来を聞くと、「『なぜ登るのか? そこに山があるから』という名言がありますよね。これを残したと言われるイギリスの登山家、ジョージ・マロリーから取りました。お肉が山みたいな大きさだったので(笑)」
その発想は、メニューにも広がっていく。肉に、山の名前を付けたのだ。それも、「富士山」のような全店舗共通の名前もあれば、小さいサイズは、出店地域に合わせて、地元の山の名前に。関西なら「天保山」「六甲山」、東北なら「日和山」「蔵王山」など、その土地で親しまれている山を取り入れた。
こうしたユニークなネーミングへの嗅覚について、「フリーペーパーを作っていた頃に養った力かもしれません」と今野さん。その歩みについては、後編で詳しく触れる。
20%値上げしても客数が落ちないワケ
ユニークなネーミングも一因となり、マロリーポークの売り上げは、開業から順調に推移している。なかでも好調なのが大手町店だ。44坪と直営店では比較的広い店舗ながら、月商は約1800万円を記録し、現在は直営店トップの売り上げを誇る。
もともと今野さんが想定していたのは、15〜20坪で効率よく回す小型店モデルだった。しかし実際に出店してみると、大手町店のような広い店舗でも、十分な売り上げをつくれることがわかった。店舗を増やす中で、新たな勝ちパターンも見えてきたというわけだ。
こうした成功を背景に、マロリーポークは2026年だけでも約10店舗を新たに出店する予定だ。取材した7月現在で、全30店舗。1店舗のヒットにとどまらず、ブランドとして成長のステージへ進んでいる。
一方で、事業の広がりとともに、新たな課題も見えてきた。その一つが、物価高による仕入れコストの上昇だ。これには逆らえず、2026年3月には全店で約20%の値上げに踏み切った。
「以前、物価高で仕入れ値が上がった時に、値上げをせずに耐えてしまったことがあって。その結果、利益率がどんどん悪くなってしまったんです。今回は同じことを繰り返さないように、価格を見直しました。ただそれだけではなく、メニューの改善も取り組みました」
もともと使っていたのは、「大麦三元豚」という1種類の豚肉だった。仕入れ価格は1kg890円ほど。しかし、物価高の影響で価格は1200円を超えるまで上昇した。
ここで今野さんが選んだのは、単純に安い肉へ切り替えることではなかった。


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