新たな豚肉を採用したのである。その1つが、肩ロースの一部である「ボストンバット」だ。脂身が少なく、厚切りにしても肉の旨みを感じられる部位だ。コストを抑えながらも、マロリーポークの看板である「分厚い肉をおいしく食べる」という価値を守れると判断した。
決め手になったのは、実際にカナダの生産会社から招待を受け、現場を見たことだった。牧場や加工工場を訪れると、豚の皮を一枚ずつ手作業で剥ぐ「皮剥(かわはぎ)方式」など、今では珍しい加工技術が残されていた。一つひとつの工程に職人が関わり、肉の品質を支えていた。生産者の仕事ぶりを自分の目で確かめたことが、ボストンバットを選ぶ決め手になった。
さらに、現地で他社の豚肉とも食べ比べ、「これならマロリーポークの肉として出せる」と確信したという。
値上げを避けられない状況でも、「安いから」という理由だけで肉を選ぶことはしなかった。お客が食べた時の満足感をどう守るかを第一にしたのだ。
メニュー全体も見直した。飲み放題プランやご飯のおかわり自由を組み合わせて、「高くなった」ではなく、「この内容なら納得できる」と感じてもらえる商品へと変えていった。
ご飯やドリンクは店側の負担が比較的小さいため、お客の満足度を保ちながら、結果的に収益を改善できたという。
目指すのは店舗数でなく「おいしいもの」
「ずっと自分が食べておいしいと思うものだけをやってきていて。それをシンプルに追求していけば、自分と同じ感性の人には刺さるんじゃないかと思って」
インタビューの中で何度も感じたのは、今野さんが、世間の流行や数字だけを追いかけてきた人ではないということだ。まず自分自身が「おいしい」と思えるか。そして、どうすればお客さんに届けられるか。そこを突き詰めながら、一つずつ形にしてきた。
しかし、なぜその答えがポークステーキだったのか。
後編では、今野さんが「ポークステーキの最高峰を目指す」という目標にたどり着くまでの道のりを聞く。


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