ウルフギャングの牛ステーキは1皿3万〜4万円。対して現在のマロリーポークの客単価は2500円ほどだ。塊肉をシェアする楽しさと値段のバランスを取った結果、たどり着いたのが牛ではなく豚だった。
明治の「乳酸菌発酵液」が変えた仕込み
マロリーポークの肉塊の食感は、豚の角煮のようにほろほろと崩れるやわらかさではない。しっかりとしたかみごたえを残しながら、分厚い肉の中心まで火が入り、ジューシーに仕上がっていた。完成度の高いステーキは、どのように生み出されているのだろうか。
今野さんに尋ねると、「マロリーポークの厚切り肉は、ただ焼いているだけではありません。分厚い肉でも最後までおいしく食べられる、誰が作っても再現できる仕組みにこだわっています」と笑顔で返答。
おいしさの秘密の核は、「発酵」と「低温調理」にあるという。
以前は、チルド肉が届くと、リンゴジュースやウスターソースを使った自家製の調味液で下処理をしていたそうだ。
「砂糖は保水力が高いので、肉汁を逃さないためにリンゴジュースを使っていました。酵素の力で、お肉をやわらかくしていたんです」
その中で出会ったのが、明治が開発した乳酸菌発酵液だった。この乳製品と食塩だけの液体は、約5500種から選抜された食肉の品質向上に適した乳酸菌を含んでおり、試してみると、その違いは想像以上だった。
「実際に漬けてみたら、一晩でこんなやわらかく変わるのかって驚きましたね」
そこから、仕込みの方法を試行錯誤を重ねて見直した。肉に穴を開け、乳酸菌発酵液と塩、コショウを染み込ませて真空パックにし、一晩寝かせる。そして、翌日は約4時間かけて70度で低温調理し、すぐに冷却する。
手間はかかるが、この工程によって厚切り肉でもやわらかさとジューシーさを安定して引き出せるようになった。
「低温調理の良さは、温度と時間を数字で管理できるところです。だから、誰が作っても同じ品質に近づけられる」
今野さんが作りたかったのは、職人の感覚だけに頼る店ではなかった。おいしさを見つけたら、それを店舗で再現できる形に落とし込んだ。その考え方が、現在の多店舗展開を支えている。
営業時には、仕込んだ肉を湯煎で戻し、注文が入ってからカットして、表面を香ばしく焼き付けるだけだ。


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