その経験から、消費者として良質な栗を求め続けるだけではなく、栗を作り続けられる仕組みそのものを作り直さなければならないことに気がついたという。
そこで始めたのが、「遠州・和栗プロジェクト」だ(2025年2月には「一般社団法人和栗協議会」へと法人化)。IT・AI事業、流通業、行政、製造業などが関わり合い、スマート農業の実現や商品開発、海外への発信やインバウンドの呼び込みなど各方面から栗農家を支え合う仕組みだ。
「そのプロジェクトの中では現在、茶室を作り、日本文化とともに和栗を味わう体験を提供しています。和栗そのものを売るだけではなく、そこに文化や体験を重ねることで、新しい価値を生み出すことができるでしょう」
また、スズキ自動車をはじめとする浜松に拠点を置く企業が共同で立ち上げた「やらかしまいか株式会社」というプロジェクトにも参画している。これは、企業の垣根を超えた人材育成や地域活性化を目指す取り組みだ。
自社のみで利益を追えば、どこかに無理が生じ、大事にしている従業員の幸福度が失われるかもしれない。また他社との競争によってお互いを削り合うことにもなりかねない。しかし、他社と協力すれば共同体として生き残り、幸福度を地域全体で分かち合うことができる。
「同じ釜の飯を食う」関係から生まれる遊び心
「これからAIが普及すれば、効率化できることはどんどん増えていきます。効率化によって利益を最大化する企業も増えるでしょう。しかし逆に、非効率で手間がかかるもの、体験を生み出し、文化を受け継ぐものが貴重になってくると思うんです。だったら自分たちは、その役割を担っていきたい。
もちろん、効率化は大事です。でも、個性までも効率化したくはありません」(間宮さん)
間宮さんの言葉に、同席した数人の社員はときにうなずき、ときには笑いながら、懸命にメモを取っていた。取材が終わったら、残っている従業員みんなで食堂に集まり、晩ご飯を食べるのだという。
春華堂の成長は、「同じ釜の飯」を食べる仲間たちの、遊び心ある思いつきから始まっている。
(前編の続きです)


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