有料会員登録
政治・経済・投資 #台湾 政治経済・ビジネス最前線

台湾の危機は「ミサイル」より中国も工作に利用する「社会の亀裂」…互いを責め合う与野党を冷ややかに見る主流民意の行方

7分で読める 有料会員限定
頼清徳総統は統一地方選を控え、対中関係よりも内政・経済に関する発信を強めている(写真:Bloomberg)
  • 柿澤 未知 大東文化大学東洋研究所兼任研究員

INDEX

“Taiwan Together as One”(台湾はひとつ)。今年の台湾(中華民国)国慶節のキーワードは「団結」だった。国慶節祝賀式典準備委員長である国民党の韓国瑜・立法院長(国会議長)が定めた。半導体チップをつないだ「2つの十」を描くシンボルマークには、国慶節の10月10日に台湾人一人ひとりが結びつき、1つの台湾になるとの願いが込められている。

「台湾の危機」と聞けば、ミサイルや上陸作戦を思い浮かべる日本人は多いだろう。しかし、台湾の最大の弱点は兵器の不足など軍事力ではなく、国のかたちと守り方をめぐる社会の亀裂にある。団結を掲げた式典でその亀裂を浮き彫りにしたのは、皮肉にも韓院長自身と国民党だった。

「平和」の守り方で台湾社会に深い断層

総統府前広場での式典に登壇した韓院長は演説で、台湾には「アメリカの51番目の州」「日本の5番目の島」「中国の31番目の省」にしたい人々がおり、思想の分裂・混乱こそ最大の問題だと指摘した。その上で、国家アイデンティティやイデオロギーの違いを超え、「中華民国」を共に守ろうと訴えた。

だが、台湾をアメリカ、日本、中国の一部にすべきだと主張する主要政党はない。そうした考えを持つ人もごく少数だ。また、一日も早い独立を望む人は世論調査で1割未満にとどまる。あくまで比喩だとしても、韓院長が描いた「分裂・混乱」はかなり誇張されている。

台湾社会の亀裂は、むしろ「戦争をしてでも中国との統一を避けたい」のか、「戦争を避けるためなら統一も受け入れる」のか、そして平和をどのように守るかという違いにある。2026年4月に発表された美麗島電子報の世論調査では、戦争を避けられるなら香港・マカオのように中国の一部になることを受け入れてもよいとの回答は、全体で23%、民進党支持者で4%、国民党支持者で51%だった。

22年12月の遠見雑誌の調査では、民進党支持者のうち、戦争が起きた場合に参戦する意思が「ない」と答えたのは28%だったが、国民党支持者の中では77%に達していた。民進党と国民党で台湾自衛の意志に大きな違いがあることがよく分かる。

民進党は抑止力の強化や米日などとの関係強化を重視する。国民党も対米関係と自衛力の必要性は認めるが、中国との対話・協力をより重視している。韓院長はアメリカの支持が台湾の安全にとって極めて重要だと述べ、疑米論とは一線を画したが、国民党の鄭麗文主席は26年4月、党主席として10年ぶりに北京を訪れ、習近平総書記と「台湾独立反対」や「外国勢力による介入への反対」などの共通基盤を確認した。頼清徳政権が提出した大規模な防衛特別予算案に対し、国民党が規模を大幅に縮小した対案を可決したことにも、抑止力をめぐる与野党の隔たりが表れている。

韓院長に続いて国慶節式典の壇上に登った頼総統は、政党間に意見の違いがあっても台湾を分断してはならないと呼びかけるにとどめた。

2/3 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数